桃色ストーリー 3 (ページ7)

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　今日は待ちに待ったモ〜旅の局収録

　先日買ったプレゼントを持って
　いざ、楽屋へ向かう

　ドキドキ、ワクワクしたり
　賢ちゃんが喜んでくれるかな…
　って不安になったり

　心の中が1週間前からずっと忙しかった

　マスターから
　東京のオススメのお店も教えてもろて
　あとは賢ちゃんとスケジュール合わせるだけの段階

　

　鼻歌交じりで楽屋に向かう途中の廊下から
　賢ちゃんの声が聞こえた

　思いがけず急ぎ足になったけど

　一緒に聞こえてきた女の人の声で

　私の足が止まった

　「川西さん、これ…あの…
　つまらないものなんですけど…」

　川「あっ、ありがとうございます
　ええんですか？僕何もしてないのに」

　「先日のロケでお世話になったので…
　是非受け取ってください」

　川「わー、なんやろ、嬉しいです」

　「ロケのとき見たお店なんですけど…
　ネクタイと、タイピンです
　使っていただけると…嬉しいんですけど…」

　川「あそこのお店オシャレでしたよね
　嬉しいです〜ありがとうございます」

　穏やかな会話が聞こえるけど

　廊下を曲がる手前で
　私は固まって動けへんくなった

　

　

　─ネクタイと、タイピン……

　………私が用意したのも同じや

　

　衣装としても使えるし
　消耗品やから気兼ねなく使えるかなって

　

　
　私の考えることってホンマに
　気が利かんというか……
　特別感ないというか……

　

　

　聞こえてきた女の子の声は
　最近すごく人気なグラビアアイドルの子
　…いかにも賢ちゃんが好きそうな、子

　

　
　なんでか分からへんけど
　すごく恥ずかしくって情けなくって

　

　気がついたら
　楽屋と反対方向のトイレに駆け込んだ

　

　鏡を見ると
　泣きそうな顔の自分

　

　『……同じようなやつ、
　プレゼントで何個もいらんやろ…』

　

　何考えてるやろ
　何浮かれてたんやろ

　

　『……これ、どうしようかな…』

　

　フワフワして明るかった気分も
　一気に冷水を浴びたように真っ青になった

　『…情緒不安定かっ』

　鏡の前で笑おうとするも情けない顔で

　

　『……慣れへんこと、するもんやないな…』

　とりあえず気を落ち着かせて切り替えよう

　楽屋に行ったらいつも通り、笑顔で

　

　…なかったこと、なかったこと

　

　全部忘れよ