桃色ストーリー 3 (ページ39)

今日:38 hit、昨日:15 hit、合計:35,622 hit

...... ページ39

　
　
　ひとしきり泣いたあと
　ずびずびと鼻をティッシュで拭いて
　賢ちゃんにお茶を出した

　泣いてる間も賢ちゃんはずっと
　優しく抱きしめてくれとった

　川「落ち着いた？」

　『う、う"ん、ごめん、みっともなくて』

　かまへんよ
　って笑いながらお茶をすする賢ちゃん

　川「うん、やっぱ美味いわ」

　『へへっ、ありがとう』

　なんか、やっぱり
　甘えてまうんよな
　賢ちゃんの前やと抑え効かんというか…

　『うちのこと…見ててくれてたんや』

　川「そりゃなぁ」

　『…そっか…
　 …うち、泣かへんって決めてたのに
　なんか賢ちゃんの前やとあかんわ
　 …なんでそんなに優しいんよ』

　川「なんでやろなぁ」

　ニヤニヤする賢ちゃんやけど
　なんか悔しいわ

　そんな私を面白そうに見て笑う賢ちゃん

　胸がくすぐったいような
　照れくさいような……

　でも不思議なもんで
　賢ちゃんの笑い声を聞いても嫌な感覚にならん

　それより嬉しさの方が強くて
　ずっと流れとるテレビの笑い声も不思議と怖くない

　なんでやろ？
　思ってたら賢ちゃんが不思議そうに見てきた

　川「どないしたん？」

　『…うち…』

　胸の中で黒く渦巻いてたものが
　スッと消えたような、そんな感覚

　代わりにあるのは
　もう、大丈夫って、そんな気持ち

　『…なんでやろ』

　川「何がや」

　『賢ちゃんなんかした？』

　川「してへんよ
　 Aに涙と鼻水をつけられたくらいや」

　『鼻水はつけてへんよぉ！』

　川「嘘や」

　二人でケラケラ笑う
　笑うのも久しぶり

　それからお茶を飲んで
　つまらない話をして
　気がついたら結構ええ時間になっとった

　川「ほな俺そろそろ帰るわ」

　『うん、今日はありがとう』

　川「ええよ」

　靴を履きながら賢ちゃんが笑って
　くるりと私の方へ振り返る
　今日はえらい優しい顔するなぁ

　川「俺のこと、頼れよ」

　『もうずっと頼りっぱなしやで、河内の兄貴』

　川「なんやねんな、それ」

　ほなな、って頭をポンポンと撫でて
　賢ちゃんは帰っていった

　リビングに戻ると
　買い物袋がそのまま置いてあって

　賢ちゃんの忘れもんや、思ったけど
　中身をよー見たら

　私の好きなフルーツオレやった

　『…はよ返してあげなあかんな』

　冷蔵庫にしまって
　私はしばらく触ってなかった
　ネタ帳を開いた
　
　
　