桃色ストーリー 3 (ページ19)

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　人混みに流されそうになりながらも
　ロケバスに向かう

　先に行く夏貴と水田からはぐれないようにしつつ
　Aもひょこひょこついてくる
　……ひよこやんか

　川「A、大丈夫か？」

　後ろを見ると履きなれてへんし
　人の流れに押されてあっぷあっぷなAが
　笑いながらも必死についてきとった

　

　『だっ、大丈夫…やと思うけどっ……』

　川「今だけ捕まっとくか？」

　めっちゃ必死になっとるから
　こっちが笑けてくるねんよ

　『け、賢ちゃんっ、ちょっとっ、失礼するわっ』

　手を伸ばしてくるA
　多分俺の袖を持とうとしとるんやけど
　掴めへんし

　そしたら
　ドンっとAが押されて
　俺の胸に突進するように飛び込んできた

　『うわぁっ…！
　 ……け、賢ちゃんごめん…』

　川「おう、大丈夫やけど……」

　ムニュっと、あの感触

　いやむしろ、ありがとうございます
　なんやけど

　

　それより、なんか…
　写真の音聞こえたけど

　こんな人混みやったら分からへんし
　そんなことまで気にする余裕ないわぁ

　

　『なんか正月のときもこんなことあったわ……』

　川「和服のとき絶対なるやん」

　『せやな…えへへ、ありがとうな
　 …はぐれへんよう、袖掴んでてもええ？』

　手はあかんやろうから
　って気を使うような素振りを見せる

　

　俺はかまへんねんけど
　そんな仲になってへんからな

　……まだ、の話やけど

　

　川「……うん、ええよ」

　ちょん、と俺の袖の端を掴むA
　めっちゃ可愛い

　

　夏貴と水田は見失ったけど
　ロケバスの方向は分かるから
　なんとか進んでいく

　『…うちこんなに夏祭り満喫したの初めてかも…
　浴衣もこんなに可愛いの着て
　好きなメンバーと花火見れて…』

　幸せや、って呟くA

　儚げな笑顔で言うもんやから
　なんか物悲しくなってまうやんか

　こんなことでそんだけ喜んでくれるなら

　川「…また来たらええやん」

　軽く頭だけを振り向いてAを見る

　『ふふ、忙しいから……
　みんなではなかなか難しいで？？』

　川「…俺と来たらええやんか」

　『………え？
　賢ちゃん一緒に来てくれるん？』

　川「一緒に行ったらええやん」

　『………うん！！！』

　弾けんばかりの笑顔で答えるAが

　何よりも輝いて見えた

　