満月の夜に。 Daiki (ページ22)

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Aの記憶力はどんどん低下していった。

今まではやっと俺を重岡大毅という人間として認識してくれてたのに、

今の彼女は、毎日毎日、記憶がリセットされる。

その度に俺は毎日毎日、自分の事を説明する。

でも、次の日になれば、また俺は赤の他人。

「俺はAちゃんの彼氏の重岡大毅」と
説明する日々。

でも、俺は決めた。

もう、Aの彼氏だと説明しないようにする。

俺はこれからこうする。

「Aちゃん。俺は重岡大毅。

俺達は一年半前に出会った。

それから……」

と、出会った経緯をAにしっかり話す。

そして、

「俺はAちゃんの事が大好きやねん。

俺と付き合ってください！」

と、毎日毎日、告白する。

濵ちゃんもその様子をずっと傍で静かに見守ってくれている。

Aの返事はいつもこう。

『よく思い出されへんねんけど…
こんな私でいいなら…。』

と、受け入れてもらえる。

でも、告白して彼氏になっては、また次の日にはリセットされる。

それでも俺はめげずにずーっと告白してきた。

気が付けば2人が出会ったあの満月の夜から
もう2年が経った。

それでもAの記憶は戻ることなく、
さらに、また病気が悪化して体も弱ってきていた。

俺はAの前では明るく振る舞うものの、
Aが見ていない所では涙を流す。

病院の庭のベンチに腰を下ろしていると、

濵「重…、いつもごめんな。」

「大丈夫。」

濵「Aもだんだん弱ってくるし…

今じゃもう、Aにとって重がどんな人なのか分かってへんから愛の力が効かんのかもな。」

「愛の力ね…。」

愛の力か…。

「濵ちゃん。俺、もう3年生なわけやんか。

もうすぐ受験も控えてる。」

濵「そうやなぁ」

俺は受験勉強もしながら病院に通ってた。

「俺な、東京の大学を受けんねん。」

濵「っ…！？そっか…。」

「ほんまは東京なんて行きたくない。

できれば大阪の大学を受けたかったんやけど。

俺のしたい事は大阪には無かった。」

濵「そっか。」

「俺が彼氏でいられるのは卒業までやな…。」

濵「そっか。寂しくなるな。」

濵ちゃんは俺の背中をぽんぽんと叩いた