満月の夜に。 Daiki (ページ15)

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それから俺は毎日病院に通った。

Aちゃんと出会ってから1年以上が経った。

もう1年もこの病院に通い続けてる。

俺はどれだけ時間が無くても、
10分でも15分でも会いに行った。

Aちゃんは毎回『ありがとう』と言う。

俺が病室に顔を出せば、Aちゃんはすぐに笑顔になる。

でも、俺は知ってたで。

誰も病室にいない時、1人で静かに涙を流していることを。

今までは気付いてない振りをしてた。

でも、毎日泣いてるのを知っていながらほっとくわけにはいかへん。

今だって窓の外を眺めて涙を流している。

俺はお見舞いのために持ってきた小さな花束を握りしめ病室に入った。

「無理したらあかんよ。Aちゃん。」

『し、重岡くんっ』

俺がいた事に驚いた後、慌てて涙を拭う。

『私、無理なんかしてへんよ！』

そうやって笑う彼女を見ると胸が痛くなる。

「ごめん、Aちゃん。

俺、知ってた。誰もおらん時に

Aちゃんがずっと泣いてること。」

『え、、』

「今までは、あんまり泣いてる事に触れたらあかんかな？って思ってたから
なかなか言われへんかったけど、

もうこれ以上、Aちゃんに我慢させんのはアカンと思った。

せやから、辛いなら1人で悲しまんと
俺を頼って？せめて俺の前だけでは強がらんといてくれへんか？」

俺がそう言うと、Aちゃんは安心したのか
涙が大量に溢れた。

ずーっと泣き続ける彼女の背中をさすった。

Aちゃんの背中は小さいだけじゃなくて、
痩せて骨でゴツゴツになってしまっていた。

泣き止んだAちゃんは
俺を見つめて悲しく微笑んだ。

『もう長くないんやって。』

「え、、」

『濵ちゃんに言われた。

お父さんは病気の治療法を見つける事が出来へんかった。

ただ、日々、弱っていく私を見て、

お父さんも濵ちゃんも

「もう長くない。もったとしても２週間が最高かも」って。』

「そんな、、」

『私も気付いてた。長くないって。

だって今の私は…ガイコツみたいやもん…笑』

「Aちゃん…」

俺はAちゃんを抱きしめた。

割れ物を扱うかのように慎重に。