黒四五丸 ページ1
｢君が新しい審神者なんだろう？｣
ぱんっとシワを伸ばすために服に衝撃を与えて物干し竿に掛ける。
問われたものに返事をする。
｢はい。…なんで私を｣
｢そりゃあ左文字の部屋に飛び入って大怪我した馬鹿な人間なんて噂になるだろう？｣
｢うっ…｣
｢それに闇落ちしていた同田貫と正々堂々白刃戦したなんてねぇ｣
生ぬるい笑顔でこちらを見る歌仙さんの目は｢こいつはどうしようもない｣と言ってる。
冷や汗が止まらない。
はぁ、と呆れられた溜息をつかれ厚や小夜がいるのに肩を大きく揺らしてしまった。
｢…顔に傷まで作ってしまって…
君は女子だ。しかも嫁入り前だろう？
全く…雅にしたまえ｣
｢は、はい…｣
これは軽いお説教だ。
｢しかし、離れ付近にある桜と池は見事だったよ。
あんなに綺麗な桜に透き通った池や優雅に泳ぐ鯉はここに来て以来見ていなかったからね。
何句か詠ませてもらったよ｣
｢わ、本当ですか｣
｢しかし…｣
詠んでくれていたらいいな、と思っていたが本当に詠まれていたと知ればただただ嬉しいだけだ。
でも再び彼の顔は少し歪んだ。
私は何かを察する。
｢池にいきなり入るなんてそんなに風邪を引きたいのかい？
どんな理由があろうとも君が無茶をすれば君から霊力を貰った刀達が迷惑するんだよ｣
｢う…それは…面目ないです…｣
｢主…そんなことしたの…？｣
｢よく風邪引かなかったな大将…｣
｢濡れたの足だけだったから…｣
｢全く…｣
身を縮めていると再び溜息をつかれた。
恐る恐る顔を上げるとそこには先ほどの笑顔とは違う微苦笑を浮かべた彼がいた。
厚と小夜も同様に彼を見上げる。
彼は空っぽになった籠を持って、ついでというように私の頭を撫でた。
ゆらりと彼の髪が揺れた。
｢洗濯物はこれで全部だ。
さぁ、部屋に戻るよ。"主"｣
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作者名：うちがたな。 | 作成日時：2017年8月18日 17時
