いつも貴方の側に (ページ22)

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免許、取れるかな(１－１) ページ22

「しっかりとギアを握って、ぐっと力入れて、ほら、こうして、ね？」

運転免許の教習車の中で、ギアを握る俺の左手にあなたの右手が重なる。

顔が熱い。俺の鼓動が伝わりそうで怖い。

「…はいっ」

「車によってギアの入り具合だとか、替わってくるけど、慣れますからね」

「…はいっ」

「フフ、ずいぶん力の入った返事だなぁ」

むしろ無表情で、ぶっきらぼうで、決して愛想のよくないこの教官が、
時々見せてくれるその微笑みが、

生徒に絶大な人気があるって、知ってるのかな？

「もうすぐ終了だな…きりがいいから今日はここで戻りましょうか。」

「はいっ」

慎重に駐車場に戻る。
まだ他に戻ってきている教習車はない。

「時間まで車内にいましょうか。」

外は寒いのに、車内は二人の息吹で熱いくらい…なのは、俺だけか。

「櫻井さん、仕事お忙しいんですか？

前回の実習から…今日はだいぶ間が空いてますね」

「…えぇ、予約を取れる日が限られてて」

「ふーん…大変だなぁ…

学科は早く終わったんですね？頭いいんだ(微笑)」

「いえ、そんな…」

大野教官の学科教習は昼間ばかり。仕事帰りに教習所に通う俺には履修できない。
だから空いている時間に機械的に取っていった。

でも
夜間の技能だって、大野教官の実習を取ろうと思ったら…

人気No.１のこの人の空き時間なんて、２週間ごとに更新されるカレンダーが公開されてすぐ、あっという間に埋まってしまう。

だから俺の実習は、いつも２週間置き。

「…教官は夜の学科は担当されないんですね」

「え？…よくご存じで。

なんでかな。学校のほうで時間割によって指導員を割り当てるんです。
私たちが選ぶわけじゃないんでね。

なんでですかね。」

教官…本当にわかんないのかな？

「昼間は学生さんが多いんですか？」

「うん、学生さんと主婦の方。女性ばっかり(苦笑)」

だからですよ…学校はよくわかってるんだ…
あなたの魅力を。

「女性って、なんかきゃぁきゃぁ言うでしょ？苦手なんだよなぁ…」

……それ、あなただからきゃぁきゃぁ言ってるんです…

「…教官って、おいくつなんですか…？」

「……教官のプライバシーは非公開の規則なんです。」

「あ…(汗)すいません…」

「なーんてね。

そう言っておけばカドが立たないでしょ？女性の皆さんは難しいから。」

「…え？」