Ep9 ページ9
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総北高校自転車競技部に入部して2週間。私には悩みがあった。部活前、どこで着替えたらいいか問題だ。
部室で着替えるには、他の部員が着替え終わるまで待って、一旦全員屋外へ出てもらわないといけない。今までそうやってきたがそれはかなり申し訳ない。
体育館の女子更衣室を借りようとした事もあったが、鍵の管理的に他の部と折り合いがつかず。
そこで考え抜いた果てに、画期的な方法を思いついた私は両手に紙袋を持って今日の部活へ登場した。
手嶋「Aさん、何ですかその大荷物は？」
「純太くん、ちょっと部室改造していい？」
主将の純太くんに許可も取り、紙袋から突っ張り棒と大量のS字フックを取り出しテキパキ取り付けていく。ロッカーを移動させ空間を開けてもらい、その奥に机を設置してあとは突っ張り棒に布を引っ掛けるだけで‥。
「簡易更衣室できた〜！」
小野田「す、すごい！」
これで着替えがうんと楽になった。坂道くんと章吉くんはすごい！と手を叩いてくれていた。
鳴子「Aさん！ちょっとワイも入っていいすか！すっげー！秘密基地みたいやー！」
「ちょっと章吉くん‥覗かないでよ？」
鳴子「覗きませんてー！‥多分？」
語尾にかなり不安を感じたのでデコピンしておいた。部室内が笑いに包まれる。なんだか暖かい。
私、総北の自転車競技部に入れて良かった。
真護「そうだ、A。いつも荷物を教室に置いているだろう。このロッカーを使うといい。」
真護くんはとあるロッカーを指さした。私はいいの？誰か使ってない？と確認すると皆、あぁ‥。と微妙な雰囲気になった。
よく見るとそのロッカーにはまだ名札が貼ってあった。
「まきしま‥？あれ、そんな人部に‥」
田所「巻島なぁ、転校しちまったんだ」
だからロッカーも好きに使っていい。と迅くんは言う。その時の表情は笑ってたけど、少し悲しそうにも見えた。
小野田「巻島さんは‥クライマーで、登りがとても速くて‥僕の憧れの人だったんです！」
「‥いいの？そんな人のロッカー使っちゃって」
ダメなわけないじゃないですか！と坂道くんは両手をブンブン振って否定してくれた。それどころか、誰も不平を口にするような人はいなかった。
でも私は感じた。まきしまって人は、この部になくてはならない存在だったんだろうなって‥。
「じゃあ、少しだけ‥お借りしますっ」
そう言って私は、少し立て付けの悪いロッカーをガシャンと開けた。
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作者名：ハレルヤ | 作成日時：2020年1月1日 23時
