Ep16 ページ16
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次の週末。あの峰ヶ山でヒルクライムレースがある、と教えてくれたのは真護くんだった。
「うちのチームからは今泉、小野田、手嶋、杉元が出るぞ。女子の部もあるからAの分もエントリーしておこうか。」
「うーん‥私はいいや！」
せっかくのレースの話だったけれど、私は優勝だとか1位だとかにこだわりは全くなく、ただ自転車に乗るのが好きなだけなので今まで試合に参加した事はなかった。
部活をしていて思うけど、仲間と一緒に走れる団体戦があれば参加してみたいかなってちょっと思う。この総北に女子部がないのが少し残念だ。
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「純太くん！週末のレース出るんでしょ？頑張ってね！」
「Aさん。ありがとうございます。他の1年の足引っ張らないように頑張りますよ。」
放課後、部活を始める前に少し時間があったのでさっそく激励を贈ると、純太くんは軽くウインクしながら返答をくれた。
「ヒルクライムレースって事は山かぁ〜手嶋くん得意なの？」
私は何気ない会話のつもりで軽く話題に出してしまったが、純太くんは少し苦笑いをした。そして、全然得意なんかじゃないんです。と続けた。
「夏休み、言われたんです。お前は登れって。知恵や技術でどうにもなるモノじゃない。だから登れ。ひたすら、足が止まるまで。」
「‥」
「これ、巻島さんに言われたんです。俺は巻島さんになれないのは分かってるけど‥近づきたいとは思ってます。」
そう、真っ直ぐ私を見据えて淡々と語ってくれた。
総北の絶対的エースクライマーの、マキシマ。まだ会った事もない彼が、どれだけ純太くんや坂道くん、部の皆への影響が大きいのか思い知った。
「純太くん‥かっこいい‥」
「えっ」
そして私は気付けば口からそう溢していた。自分の得意ではない分野をやり遂げようとする精神に、私は心を打たれた。
「純太くん！私その日用事あるから見に行けないけど応援してるよ！」
「‥ありがとうございます。」
純太くんの両手を握手するように私の両手で握って、ブンブン上下に振った。頑張って、とエールを込めて。
「あ、そうだAさん。ちょっと協力して欲しい事があって‥」
純太くんからのお願いなんて珍しい。彼は私の耳元に口を寄せてごにょごにょと呟いた。
「それいいね！やろうやろう！」
純太くんも私も、ひひっといたずらっ子のような笑いを浮かべた。
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作者名：ハレルヤ | 作成日時：2020年1月1日 23時
