みなとくんの隣

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講堂で行われた新歓公演は大成功だった。たくさんの後輩たちが来てくれればいいなあ、拍手を受けながら思う。

夏帆のほっと一息ついた顔に頬が緩む。

舞台裏に行くと、井上くんが立っていた。

「ちょっとだけ見れましたよ、Aさんが吹いてるとこ」

「え、ほんまに？ありがとう」

そう言うと、井上くんが笑顔になる。「俺も頑張ってきますねー」と準備に行ってしまった。

……後ろから感じるのは、夏帆だけでなくサークルの人達みんなからの視線。

「先輩、あの人とどういう関係ですか？」

「あの人ってダンスサークルのサー長さんの井上港人くんですよね！？」

「ただの知り合いやって」

なぜか目を輝かせる彼女たちを宥めながら、夏帆の方を見る。…やれやれ、と言った様子だ。

譜面台を片付け、一息つくと客席から歓声が聞こえてくる。

「…なんか、すごい盛り上がってるね」

舞台袖から覗いてみると中央にいるのはもちろん井上くん。横から見てもキレキレで見入ってしまう。

…が、しかし新歓公演実行委員会の方々の目線が痛かったのでそっと片付けに戻った。

「すみません…」

結局続きを見ることは叶わず、講堂の外に機材を運ぶ作業を続けた。

重いし大変だけど、このサークルはほぼほぼ女子で構成されてるのでサボるのも申し訳ない。

「Aさん、これで最後ですー」

「はーい、…重っ」

思わず機材の重さに負けそうになるが、何とか持ちこたえて後輩ちゃんと一緒に練習室に持っていく。

「お疲れ様でしたー、終わりです！」

「お疲れ〜。さ、戻ろっか」

「…ふふ、はい」

なぜかニコニコしている後輩ちゃんを訝しげに見つめていると、「さっきの先輩、すごく嬉しそうでしたよ」なんて言ってくる。

「え、いつ？公演中？」

「井上先輩と話してる時ですよ！自覚なしですか？」

えぇ、私が？

「あんな顔初めて見ました」

と言われ、少し顔が熱くなった。

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