僕のお気に入り 2

集中できない(alim) ページ30

それからしばらく時間がたったものの、 さっきのことばかり考えてしまう。


“みんな、かんちがいする”


頭の中で何回も何回も繰り返されるジョンインの言葉。

何を勘違いするのか教えてくれてもいいのに...。


ふと顔をあげると、皆辞書とにらめっこしていて集中している。

私も集中しようと辞書とノートに目を向けるけど、考えてしまうのはやっぱりさっきの言葉。

頭の中のもやもやが消えない。

勘違いって、何だろう。

それに、“赤くなるのが癖”“気を付けた方がいい”って何？


そんなことを考えているうちに、いつの間にかずいぶんと時間が経ってしまっていた。


「ヌナ？...ヌーナー？」


そうイーシン言われてハッとする。

慌てて時計を見ると、最後に時計を見てからもう３０分以上も経っていて。

あぁ、やっちゃった...。

これから皆仕事があるから終わらないといけないのに...。


皆を見ると、「もう時間だよ？」と不思議そうに私の方を見ている。


「ごめんね、もう終わろっか」


私がそう言うと、皆次々とノートを目の前に重ねていく。

そして私はそのノートを鞄の中に入れて、席を立った。


「皆、今日もお疲れさまでした。次の授業は明後日だから、わからないこととか聞きたいことがあったら、またその時に聞くね」

私のそう言い終わると、皆が「ありがとうございました！」と元気よく返事をくれる。

そのあとは「ヌナ！帰り道気を付けてね！」「明後日楽しみにしてるよー！」「今日僕らテレビ出るから、ちゃんと観てね！」なんて言われながら、お見送りをしてもらった。



パタンと、扉を閉めてエレベーターまで歩き出す。

ひゅうひゅうと吹く冷たい風が、私の頬に吹き付けた。


...今日の私、先生失格だなぁ。

ぼーっと考え事してて集中してなかったなんて。


エレベーターのボタンを押すとこの階で止まっていたのか、すぐに扉が開いた。

エレベーターに乗り込んで、１階のボタンを押す。

徐々に閉まっていく扉。

あとは１階に着くのを待つだけ。

だんだんと扉の隙間から見える景色が狭くなっていって。

扉が閉まるまで、あと数センチ。


と、そのときだった。


ガタッ、と大きな音がして、もうすぐ閉まるはずだった扉が開いたのだ。

びっくりして、思わず後退りをする。


そしてまた開く扉から姿を見せたのは、タオだった。

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