【ハイキュー!!】バレーの王子様Vol.2【男主】

第４７話：真ん中就寝 ページ12

戻ってきた頃にはもう１０時を回っていて。
当然といえば当然なんだけど、ほぼ消灯されている。

『怖くない何もいない怖くない』

さっきから呪文のように繰り返す。

こういう時に限って思い出したくないものを思い出してしまう。
シャンプーしている時は目をつむっちゃだめだとか、だるまさんの歌を歌っちゃだめだとか。

怖がりじゃない、でも暗いところが苦手。
普段は平気なのに、ひとりでいると色々考えてしまう。


『怖くない何もいない怖くな』
「さっきから何ぶつぶつ言ってるんだ？」
『ぎゃ！？』

部屋着に着替えながら呪文を唱えていると急に聞こえた声。
それに妙な声をあげて飛び退いた。


「あ、ごめん、怖がらせた？」
『･･･別に怖がってない』

大地がいた。

『どうしたの、忘れ物？』
「いや、Aを迎えに来た」
『えっ』

なんで？

「だってほら、この時間の風呂Aひとりじゃあれかなって」
『馬鹿にしてる？』
「してないしてない」
『笑ってるぞ』

堪えきれず笑い出す大地にため息をついた。
でも大地がきてくれたおかげで、妙なことは考えなくなった。
やっぱり、大地には俺のこと色々筒抜けな気がしてならない。

「あ、ちゃんと髪乾かせよ」
『･･･はーい』

お父さんめ。




* * *




風呂からあがると、布団の場所はもう決まっていた。

広い部屋に二列の俺は真ん中。
右が孝支、左が影山、上が月島だった。

「おかえりー」
『ただいま』

日向や龍を踏まないように気をつけながら布団へと向かって体を投げる。

『ふいー』
「お疲れ」
『お前らの方が疲れてるだろ、お疲れ』
「まあでもAもお疲れ」

大地と孝支が笑う。
ありがと、こちらこそありがと、なんて謎の会話をしながら。

『っていうか何で俺真ん中なの。端がいい』
「端は競争率高いよ、早いモノ勝ち。Aは余り物」

にしし、と笑う孝支にため息をついた。

『蹴っ飛ばしたらごめんね』
「･･･大路さん寝相悪いんスか」
『今日急に悪くなるかもしれないじゃん、一応謝っとこうと思って』
「やられたらやり返していいスか」
『先輩はいたわれこら』
「横暴ですね」

影山の口から横暴って出てくると面白いな。

「こっちも蹴らないでくださいね」
『上の月島をどうやって蹴るんだよ』
「いやあ、大路さんならやりかねないですよ」

やっぱり、なめられてる気がする。いや、なめられてるよねこれ。


こうして賑やかすぎる合宿が始まったのだった。







→

第４８話：秘密特訓→←第４６話：合宿初日

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す