第16話:こんな時くらい名前を ページ17
「こんなところにいた」
相変わらず腹の立つ笑顔の及川。
『へらへらするな』
「それ八つ当たりって言うんだよ」
知ってる?と顔を覗き込む。
『及川』
「ん」
『俺、バレー好きだ』
「うん」
『でも』
何の役にも立てない俺が居てどうするんだって思うんだ。
「・・・ねえ、あくまでもこれは俺の考えだよ」
小さく声がして軽く肩が触れた。そこが少しだけ暖かい。
「俺は戻ってきて欲しい、直接対決はできなくても、ね?A」
『うるさい・・・徹』
「え!?」
小さく呼んだそれは聞こえたのか。
「ねえ、もう一回呼んでよ」
『しつこい』
「あ、待ってよー!!」
無言で背を向けてそのまま歩き出すと慌てて追いかけてきた。
「どうしたらもう一回呼んでくれる?」
『王子をやめたらね』
「格好良いのに」
『俺は王子じゃなくて大路!』
「ムキになるところも可愛いよ?」
腹立つ。
* * *
体育館へ戻ろうとすると及川に引き止められた。
どうやら及川は先生達にうまく言ってくれたらしい。
『うまくって?』
「王子様が寂しくて泣いてるから、俺が慰めてきますーって」
『・・・』
「う、嘘だよ」
ほら来たよ、と俺の視線から逃げるように指をさした。
でも確かに黒いジャージがずらずらと。
それを見て走り出そうとした俺の腕が引かれる。
「いくら日向と影山のコンビが優秀でも、周りを固めるのが俺達じゃあまだ弱い。・・・悔しいけどな」
「おおー、さすがちゃんとわかってるねー」
大地に及川が急に突っかかる。
しかし彼らの視線はなぜか及川に引かれる俺の腕へ。
「Aさんの神聖な腕に何触ってんだコラ」
「離せコラッ」
絡む田中と日向。
それに対して触れたら負けだと思う。
「ほら、王子様のシンセーな腕にも触らないよ」
『及川』
「そんな怖い顔しないでよ、シンセーな王子様?」
完全に馬鹿にしてるだろ。
「次は全開で戦ろうね」
言って、影山を指差した。
「俺はこのクソ可愛い後輩を公式戦で同じセッターとして正々堂々叩き潰したいんだからサ」
及川は歩き出す。
「あ、そうだ。A」
『ん?』
「またね?」
『お、おお』
なんでまた名前を呼ばれたのか、及川はひらひらと手を振る。
手を挙げて答えると嬉しそうに笑って去っていった。
「ねえ、A」
『はい』
「仲良いんだね?」
『いえ、そんなことは』
「A」
『はい・・・』
何故俺が責められているのか。
真っ黒大地が浮かべる笑顔。
さて、どうしたものか。
→
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☆神雲☆ - すっ…………菅さん………、天使……… (2017年11月23日 22時) (レス) id: 31a5141faf (このIDを非表示/違反報告)
炎人氷柱眼帯歌唄お鈴虹猫の姫君(プロフ) - 浅ちゃん、うん忙しいからしたかないよ、更新頑張ってね! (2014年10月13日 16時) (レス) id: 2e52a946c5 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - 炎人氷柱眼帯歌唄お鈴虹猫の姫君さん» 姫ちゃん!!遅れてごめんね!!ひさしぶり!!!! (2014年10月13日 8時) (レス) id: a6dbb70d76 (このIDを非表示/違反報告)
炎人氷柱眼帯歌唄お鈴虹猫の姫君(プロフ) - 浅ちゃああああん!!久々! (2014年9月24日 16時) (レス) id: 5382ccf214 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - 黒宇佐さん» コメントありがとうございます!黒尾さん格好良いですよね!!もしここのお話にあのかっこよさが表現できていたら嬉しいです・・・!本編にもそろそろ登場だと思うので、ぜひぜひよろしくお願いします!!! (2014年6月3日 5時) (レス) id: a6dbb70d76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:浅葱 | 作成日時:2014年4月6日 17時