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依頼 ページ2

翌日、目が覚めるとテーブルに紅茶とビスケットを並べるユークの姿が目に入った。

「さあ朝食まで時間があるから軽くお腹に入れておいて。そして早く顔を洗って、髪を纏めてきて」
「……」

昨夜新聞を読んだまま俺は部屋のベッドに移らずにソファーで眠っていたらしい。

「シャロ、私に『ばあや』みたいに言われたいの?」
「ッンなのはごめんだ!」
「なら早くして――仕事の依頼が来てるから」
「それを先に言え!!」




ビスケットを口に詰め、紅茶で流し込み髪を纏めて戻ると、アイロンを掛け終わったシャツを渡された。
手早く着替え下に行けば、伯爵かもしかしたら侯爵クラスの四十がらみの貴族がうなだれて座っていた。件の依頼人だな。

「で、俺は昨夜アンタの妻を殺した犯人を捕まえればいいんだな?」
「は?! え、あ……あの」
「これから現場、アンタの部屋は見れるか?」

隣に来たユークが依頼人の死角から俺の膝裏を蹴り、同時に軽く椅子を引いて「シャーロック様、先ずはお掛けください」と強制的に座らせた。
兄貴との勝負の為の修練相手に格闘技を教えた過去の自分に腹が立つ。

「あの、ホームズさん、何故まだ何もお話していないのに……」
「あ゙? 見りゃわかる」

仕立てのいいオーダー物を着ているのにシャツの皺が目立つ、香水の香りも薄いのは朝帰りだ。
朝帰りにそのまま依頼? 何故? 物取り程度なら最低限の身嗜みは整えてくるだろ、だがそれもない、つまり使用人にも声を掛けずに辻馬車で来たんだろう。
そもそも使用人にも黙って朝帰り、そのまま青ざめた顔で来るのは?

「あ……」
「そしてアンタの靴底から側面に付着した粘り気のある赤茶けた汚れ、毛足の長い絨毯に染みた血によるもんだろう」

そんないい絨毯、寝室か妻の部屋くらいだろ。

「他にもあるが……まあ、それより急いだ方がよくねえか?」

口をパクパクさせてる依頼人を眺めていると、外から二台の辻馬車の音がした。いつの間にかユークは辻馬車を呼びに行っていたらしい。
同じ結論に辿り着き、行動と手際の良さでさっきの蹴りはチャラにしてやろう。

「……ハァ」

ユークは依頼人と俺を見て溜め息を吐き、雨が降りそうなので急ごうと未だ口を開いたきりの依頼人を支え立ち上がらせ連れて行く。

「つか、お目付役だからってユークも行く必要あるのか?」

居りゃそこそこ役立つが、見張られてる感じはいい気がしない。

機微→←探偵シャーロック・ホームズ



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わらび(プロフ) - この作品を最初から読んでみたいです。パスワードを教えていただけないでしょうか?よろしくお願いします。 (5月10日 16時) (レス) id: 34508226ea (このIDを非表示/違反報告)
ふうか(プロフ) - 初めまして。この作品をはじめから読みたいのですがパスワード教えていただけないでしょうか? (2022年10月1日 10時) (レス) id: 103a1a1ae5 (このIDを非表示/違反報告)
らら(プロフ) - はじめまして。この作品を最初から読みたいのですが、パスワードを教えていただけないでしょうか。 (2022年4月20日 0時) (レス) id: 44fed9ee68 (このIDを非表示/違反報告)
ミルクミント(プロフ) - パスワードを教えてもらえませんかお願いします (2022年4月14日 13時) (レス) id: ec7fbc943f (このIDを非表示/違反報告)
skyzero - 初めまして。この作品を最初から読ませて頂きたいのですが、パスワードを教えて頂けませんか? (2022年3月22日 23時) (レス) id: 034e636663 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:MUMU(かとえ) | 作成日時:2020年1月29日 3時

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