5,最後の審判 ページ11
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───美しいものは摘まれて、枯れる
「私、三途さんに片思いをして、花吐き病を患ったんです」
「好きです、すきっ…すき、ねぇ…っ三途さん」
「いまだけでも…Aって、呼んでくれませんか」
呪いのように心に侵食する彼女から無慈悲紡がれる言葉は剥き出しのナイフで何の抵抗もせずに心臓を何度も突き刺すようだ。応えを求め続ける彼女を壊れそうなほど抱き締めて、ただ確かな言葉だけは絶対に口にはしなかった。何度も彼女の甘さに酔いしれて、いつも体温が低く雪のように白い肌が火照りじんわりと赤く染まり汗が滲んでいるのを捉えてしまうと、口から決定的な証拠を出てしまいそうになった。その度に、
応えたかった。好きだ、と伝えて、愛してる、と鬱陶しく感じるまで彼女の笑顔に困り顔に変えてしまうくらい何度も言って応えてやりたかった。だのに、オレがその言葉を言ってしまった数分後に彼女がこの世から跡形もなく消えるというのはどうしても受け入れられないという我儘で応えてやれなかった。
穏やかな表情で眠る彼女を見ていると、間違いなくアイスだろうなとわかる彼女がもしアイスでなかったら、もし消えることなくただ眠ったように今のような状態で死んでいたのならオレはまだ彼女に好意を伝えるのはこれほど苦しくはなかったはずだ。滑稽だな、今まで血を拭い切れないほどの数の人間を手にかけておきながら、ただ彼女だけの死は受け入れられないなんて。
彼女のひんやりとした肌からほんの少し伝わる温もりは彼女はまだ生きているのだとオレを安堵させる。最早、精神安定剤と言ってもいい。すると、彼女はおもむろに身じろぎ寝返りをうってオレに背を向けた。彼女を包む毛布もそれに流れて肩があらわになればそこには噛み跡に赤い小さな痣が散っている。固唾を飲み、さっき着たスーツの上着を彼女に掛けてやって顔を近付けた。
「A、」
今更になって名前を口に出してみれば彼女の睫毛が震えた。起きる様子はなく、静かに沈み込むような呼吸を繰り返している。近付けていた顔が彼女の頬に触れそうな紙一重の距離までになって背徳感を感じて何も出来ずに裏口から出て行った。深夜の秋風がシャツの隙間に入り、身体の熱を冷ましていった。
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パチンカスヱ(プロフ) - 凛愛さん» ありがとう😌💕こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとう😌 (2021年12月30日 8時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 完結おめでとうございます!表現ひとつひとつが刺さるお話でした…!!たった一度の恋をこんなにも儚く美しく書ける文才に感嘆するばかりです。書いてくれてありがとう!!ココくんの新作も楽しみにしてます🥺🥺 (2021年12月26日 20時) (レス) @page17 id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
凛愛(プロフ) - 完結おめでとう!!泣きました…素敵なお話をありがとう…😭😭 (2021年12月26日 13時) (レス) @page17 id: f83a603b36 (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - 桜峰瑠璃さん» 嬉しいです……!!!! 一緒に出頭しましょう🥰 (2021年12月2日 15時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
桜峰瑠璃(プロフ) - ヤバい!!!全性癖にぶッ刺さる!()しゅき…興奮する!!!!!(通報案件) (2021年11月30日 17時) (レス) @page5 id: 643076eff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パチンカスヱ x他1人 | 作成日時:2021年11月24日 6時