世界はファンシー Ⅱ (ページ7)

今日:6 hit、昨日:4 hit、合計:9,388 hit

WINDOW開ける　　#陸ページ7

みんなすぐ気付いてやめたけど、一瞬だけ信じ難いものを見た時の視線を私に投げた。

一瞬だけだったけど私はその視線を見て、『もう夢の話はしちゃいけない。』と子供ながらに思った。
今みんなが私を不気味と思ったと感じた。それはほんの、瞬きくらい一瞬のことだったけど。

だからそれ以来雅紀に会うまでは、予知夢を見た時はオニイチャンにだけ話した。オニイチャンは昔から何でも話を聞いてくれる。

雅紀にそのことを話したのは、彼のチカラを目の前で見てしまったのと、そのチカラを出させてしまうキッカケを与えてしまったことへの罪の意識と懺悔のような気持ちからだった。

火災事件の後、しばらくはニュースを追って様子を見ていた。
私たちの存在が報じられることはなかった。

3ヵ月ほど経って、現場をこっそり見に行ったりもした。火事の焼け跡がある以外は何の変哲も無かった。

そのビルの壁の焼け跡を眺めながら、私は自分の予知夢の話を雅紀にした。
心のどこかに「この子は私を“気味悪い”と排除しない。」っていう直感もあった。同類という意識。
……同類、というより『同胞』が近いかもしれない。似たモノ。

雅紀は黙って聞いてた。

・

・

・

「どうした？」

大野さんの声に、自分の意識が過去に戻ってたことに気付かされてハッとした。

「Aサンは、オレに以前会ったことあるって思うようなことがあったの？」

大野さんの目が、少し笑った。
優しい色の目をしてる。

「……うん。」

その目の色に唆されるように、私は答えた。
大野さんは少し目を見開いた。

「……へぇ。どこで？」

「それは、よく分かんないんですけど。」

「いつ頃？」

「それも分からないです。」

「何だそれ(笑)」

「でも、」

私は大野さんの目を見た。黒目の底に蒼色が見えた気がした。

「でも？」

「……大野さんの目って、瞳がちょっと青い？」

「ん？」

「黒目に蒼色が差してたから、今。」

「もしもし。話逸れてっけど(笑)」

そう言って笑った大野さんの黒目は、普通に黒だった。