世界はファンシー Ⅱ (ページ35)

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マスターボリューム　　#陸ページ35

『キミが助けてくれなかったら…キミがあの場に来てくれなかったら、私が襲われてた。あいつらに。』

そこで何があったのか。
言葉から事情を推測していると、二人はその場を離れていった。

『キミは何もしてなかった。あいつらに殴られただけだった。何一つ殴り返しもしなかった。私見てた。』

『……でも、オレ…あれはオレが…』

(え？コイツ？？)

耳を疑った。
男の方は完全に状況にガタブルだし、ケンカをけしかけるタイプでも応戦するタイプでもなさそうなのに？

(コイツが…？)

怪訝に思いながら、去って行く後ろ姿2つを人混みに紛れて見ていた。

二人が別れる間際に聞こえた会話で、名前が分かった。俺は二人の名前をメモに書き留めた。

「相葉雅紀」と、「AA」。

二人は都内に住む高校2年生だった。
学校は別々なので接点は何かと探ったけど、特に何も見当たらない。あの時の会話からして、あの日初めて会ったようだ。

俺は二人をこっそり調べ始めた。もちろん仕事があるから、手隙の時にだけ。
それでも職務上の利点を活かし、彼らの住所氏名・家族構成・犯罪歴等を調べた。
二人とも、ごく普通の家庭の子供だった。

相葉雅紀は、北千住で中華料理屋『相葉亭』をやってる家の子で、4人家族の長男。都立高校でバスケ部所属。
中華料理屋は祖父母が開いた店で、現在2代目。祖父は雅紀が小4の時に心臓発作で亡くなってる。祖母は相葉が生まれる前に他界。

AAは、世田谷区在住の私立中高一貫校に通う高校生。部活は無所属。
両親は揃って研究者で海外赴任、祖母と2人で暮らしてる。一人っ子。

あの日は、相葉は渋谷に遊びに出てきていて、Aは塾の帰りだったらしい。

時々仕事の流れで彼らの在住エリアに赴いた時は、それぞれの学校辺りで様子を伺ってみたりもしたけど、芳しい結果は無かった。
特に目立つこともない、ごく普通の高校生。