世界はファンシー Ⅱ (ページ4)

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WINDOW開ける　　#参ページ4

「あるじゃん。シンポジウムで。」

大野さんは、特段表情も変わらないまま答えた。

「シンポジウムの時じゃなくて…もっと前です。」

そう言うと、読めない表情で私を見つめてきた。

……ホント読めないんだよね、この人。
大野さんは、凪いだ水面みたいな表情してこっち見てる。その顔はYESなのかNOなのか。どっちなのか分からない。

「いつか…どこかで、会ったことあるのかもしんないね。」

数秒後、大野さんはそう答えた。

「……それ、どういう意味ですか？」

「広いようで狭い東京の同じようなエリアで生息してるんだから、もしかしたら以前どっかで会ってんのかもしれないよね、って話。」

大野さんはそう言うと、「よいしょ。」と立ち上がった。

……ふーん。

立ち上がって少し遠くを見つめる大野さん。その横顔を眺める。
ぼーっとしてるキャラを利用して躱された気がした。

──私の記憶にあった、あの光景。

あれは過去の経験じゃなくて、もう一つの方の記憶の光景だったのかもしれない。でもそっちにしたって、何で大野さんが…？

もう一つの方の記憶───それは『私の頭の中に浮かぶ夢』のことだ。
私は時々、変な夢を見る。

変な、というのはそれが予知夢みたいなものなのだけど、素敵な予知夢はほぼ無くて、大体は良くない夢ばかりだから。たとえば、紛争が起こるとか。天災に見舞われるとか。そんな暗い夢ばかりだ。
夢の景色は知ってる場所のこともあるし、見たこともない場所のこともある。

夢を見るタイミングが、現実にそれが起こる直前だと分かってたら、何らかの形で警鐘を鳴らすことも可能かもしれない。
だけど実際は、夢を見ても現実にそれが起こるまでかなりの時間がある。そのタイムラグの間隔もまちまち。

それともう一つ。全部が“予知”でもなく、見た夢が既に過去で起こった、私が知らないだけの事件や事故のこともある。

結論として、夢を見ても私には何も出来ない。

夢を見て目が覚めた時、「いつか、あれが起こってしまうのかもしれない。」と暗澹たる気分だけが残るだけ。
そして、忘れた頃にニュースを見て「ああ…あの夢はコレのことだったのか。」となるだけだ。

絶望しかない予知夢。
正直、嫌な気持ちにしかならないし、出来ることなら見たくない。