世界はファンシー Ⅱ (ページ16)

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カラクリカルカレ　　#漆ページ16

この世界は、女子供であるだけで舐められる。甘く見られる。危険に脅かされる。
“無差別殺人”って言うけど、あれは決して無差別なんかじゃない。自分より弱い人間をターゲットとして選別してる。だから、大方のところ女か子供が犠牲になる。どこが“無差別”だ。しっかり選抜してるよ。

よって面倒は自衛で減らすに越したことはない。
なんでこちら側が自衛しなきゃいけないのか、という不公平さにイラ立つけど、とりあえず今は自衛しかない。

そんなワケで、あれ以来なるべく見た目の“女”という空気すら消す方向でやっていくことにしてる。可愛らしいカタチも色味も、私には不要でいい。

髪は楽なので伸ばしっぱなしで長いけど、世の人は髪の長さより服装で『性差としての女』を判断するところがある。
その上地毛の色素がかなり薄くて、日に当たると金髪にも見えるからか若干ヤンキーっぽく見えるようで、そのおかげかナンパみたいなのものに遭遇することも無くなった。

ただし、同時に女子もなんだか遠のいてしまった気はするけど。
私の日常も、もしかしたら辛党なのかもな。甘いのはキャンディーだけだ(苦笑)

突風が背後から吹き上げた。

フードからはみ出た髪がまるで両手のように、行く手を塞ぐように舞う。
好き勝手に舞い流れる髪を押さえる。

その時、髪を押さえた左手が疼く感触がした。
巻いた包帯のその下から、掌の奥がざわめく感覚。

思わずギュッと拳を握って、それを消そうとした。
立ち止まって力を込めた時。

音がする。
秒針の音。行進のような足音。

顔を上げた瞬間、風が顔面を直撃した。フードが煽られ、脱げる。
バサバサッと髪が舞い踊る。でもそれを押さえるのも忘れて、私は音に耳を済ませる。

「────A。A！」

雅紀が呼ぶ声で我に返る。

「………え？」

「『え？』じゃないよ。どーしたよ。」

不安そうな顔でこっち見てる。
心配かけたくはないんだけど、今のは言うべきかどうか。

……ちゃんとカタチが見えるまでは、まだ黙ってることにした。