Own Civilization #参 ページ8
緩やかに眼下に漂わせていた視線を、次はある一点に向けて照準を合わせ、グッと目を凝らす。
手前に幾つも幾つもビルが立ち並ぶ、ずっとその先。
ここから数キロ離れた、営団地下鉄駅の地上入り口。超小数点地点。
障害物の建物を全て透視するように、一点に集中する。
マンガの集中線みたいに、みるみる視界が高速でズームアップしていく。
その先に立つ一人の人間がクローズアップされる。
その人は人待ち顔のような、あるいは誰を待ってる訳でもなくただ佇んでいるような、そんな様子でそこに立っている。
黒いトレーナーに黒いスウェットパンツ。両方ともオーバーサイズでダボダボ。袖口から指先がかろうじて見えるくらいダボダボ。
日の当たり具合では金髪にも見える薄茶の毛先が、背中の真ん中辺りで風に吹かれて揺れた。
ハーフアップで持ち上げた髪は、頭上で小さく雑にまとめられている。まるで王冠を天辺に載っけてるみたい。
口から白い棒が見えてる。いつものチュッパチャプスだろう。
「─────ハハッ。」
その様子を見て、思わず笑みを浮かべた。
そのキャンディー、今日は何味食べてんのかな。いつものコーラ味か、この前あげたイチゴミルク味か。
愛おしむように。憐れむように。懐かしむように。
その姿を見つめる。遥か遠いビルの上から。
「……そろそろ、タイマーをセットしようかなと思っててな？」
おまえはどうする？一緒に来るよな？
それとも・・・・？
一体、その時おまえはどんな顔するんだろう。
「────コードネーム、覚えてるか？」
小さく口の中で呟いた、その時。
Aはキャンディーの棒を持って、ゆっくりと目線を動かし。
その視線が、オレの視線とぶつかった。
……ような気がしたんだけど気のせいだな、さすがに。
数キロ離れた、こんな高低差もある中で。障害物をすり抜けて。
あるわけない。
それでもこびり付いて離れない、視線が重なったような気配。
その人は数秒睨むような目でこちらを見ているような顔をした後、再び目線を元の街中へと戻した。口の中でキャンディーをコロコロさせてるいつもの顔をして。
俺は少し、感動的な気持ちにすらなった。
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羊羽(プロフ) - のりさん» のりさんお久しぶりです！物理理論をそれらしく書いてるせいで誤解を生みましたか？マジでよく分からないままそれらしく書いてるだけですから（笑）この段階でﾄﾞｷﾄﾞｷしてもらえてるの心底嬉しいです。徐々に全貌見えるはずですので今後もﾖﾛｼｸﾃﾞｽ。 (2021年5月7日 11時) (
レス) id: 62b440dca8 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - お久しぶりです。羊羽さんてめちゃくちゃ頭良い方(勉強もだけどクレバーという面でも)なんだろうなぁとずっと思ってましたが…お話ドキドキが止まりません。続き楽しみにしてます♪ (2021年5月6日 20時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽
| 作成日時：2020年6月24日 9時
