ラディアルナイトチェイサー #参 ページ29
ニュースが流れた。爆発事故。渋谷で。
オレは店の片隅に設置されたTV画面に目を向けた。
Aもハバネロを振りかける手を止めて、そっちを見た。
渋谷。
爆発。
記憶の中の光景がフラッシュバックする。
数年前の渋谷のとある雑居ビル脇の路地。
燃え上がる炎。
顔を押さえてのたうつ男。
火達磨になって転がる男。
腰を抜かしてしゃがみ込む男。
逃げ去っていく男。
自分の指先が冷たくなってく。血の気が引いてくのが分かる。
目の前の断末魔のような叫び。
徐々に近づくサイレンの音。
拡がる群衆の騒ぎ声。
「雅紀。」
Aに呼ばれて、意識が引き戻される。
「お食べ。」
まだ半分ほど残ってる麻婆豆腐の皿を、オレの目の前に差し出してきた。真っ赤っ赤の麻婆豆腐。
「……そんな真っ赤っ赤の、食えるかい。死ぬわ。」
「一口でいいから。」
言ってる最中からAはレンゲで麻婆豆腐を掬い、オレの口元にグイッと差し出す。
間近に来ると、いかにも辛そうな匂いが襲ってきた。既に目が痛ぇ。
「ほら。あーん。」
「……。」
渋々オレはレンゲを受け取り、口に運んだ。
その途端。
「かっら！！！！！ゲホッッッ！」
慌てて水を飲み込む。
こんなん、人間の食いもんじゃねぇ！！！辛すぎる！！
「〜〜〜〜〜〜ッ死ぬかと思ったわ！！舌が痛ぇし、目も痛ぇ！！」
犬みたいに舌を出してハァハァしながらAに文句垂れる。
「大袈裟…」
Aは皿を引っ込めた。
「大袈裟じゃないわ！こんなん人間の食う辛さじゃねぇ！」
「私が食べてる。」
「じゃあAは人間じゃねぇんだわ！」
「なにぃ？シツレーだな！」
舌を出して熱さと辛さを冷ましながらAに怒ってるうちに、指先の感覚は元に戻ってた。
もう大丈夫。
「────さんきゅ。」
「何が？」
Aは知らんふりでそう言いながら、ハバネロを振りかけた。
オレはもう、止めるのをやめた。
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羊羽(プロフ) - のりさん» のりさんお久しぶりです！物理理論をそれらしく書いてるせいで誤解を生みましたか？マジでよく分からないままそれらしく書いてるだけですから（笑）この段階でﾄﾞｷﾄﾞｷしてもらえてるの心底嬉しいです。徐々に全貌見えるはずですので今後もﾖﾛｼｸﾃﾞｽ。 (2021年5月7日 11時) (
レス) id: 62b440dca8 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - お久しぶりです。羊羽さんてめちゃくちゃ頭良い方(勉強もだけどクレバーという面でも)なんだろうなぁとずっと思ってましたが…お話ドキドキが止まりません。続き楽しみにしてます♪ (2021年5月6日 20時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽
| 作成日時：2020年6月24日 9時
