#07 アカシア ページ7
「まだ怪しいと思ってるんでしょ。」
隣りで肩肘立てて横たわるAさんは、掛け布団の上から絶妙な力加減でトン、トン、トン、と一定のリズムで叩いている。
心地いいリズム。
「うん、まぁ。」
あの日、帰ってから『添い寝屋 アカシア』をいろいろと検索した。
店が出してるHP、そして数件のブログや「ちょっと変わった店紹介」みたいなサイトが上がってきて、それらを読んだ。
数件のブログはもちろん本人の体験談として書かれていて、そのどれもが「え、この人が？」っていう有名人のものだった。
ベンチャー企業社長や、作家、映画監督。そういった人たち。
おそらくこの人たちは自分の名前を出すことが自身の営業の一環ゆえ、こういったブログで来店したことを書いてるけれど、ネットでは見えてこない顧客として一流会社の重役や官僚・政治家みたいな人たちもいるっぽいことがその文章たちから推察された。
───なかなかに興味深い店だな、と思った。
読んで怪しむ気持ちが無くなったわけじゃないけど、そこまでの客を掴む店のサービスを自ら体験したい欲求の方が大きくなった。
だから、連絡してその扉を叩いた。
「怪しいと思いながらも、もう３回目の来店。なのにまだ怪しんでるんだ。」
Aさんはクスクス笑いながら、静かな声で話す。
此処は。
添い寝屋というのは。
ホテルのような(眠るだけなので、ホテルよりも部屋はもっとこじんまりとしたサイズ)静かな、落ち着いた空間の中に、とんでもなく寝心地のいいクイーンサイズのベッドが一つ置いてあって。
室内の灯りは、部屋の隅から柔らかく照らされる間接照明だけで。
絶妙な堅さのマットレスの上に横になり、羽のように軽い羽毛布団を掛けられ、隣に『添い寝屋』が一緒に横になって、そこで眠りに就く。
そういうものらしい。
部屋の中は無音のようでいて、微かに何か音が流れてる。α波とかいうやつかな。
柔らかい、綿のような声で添い寝屋が会話する。
全てが『眠り』というもの対して一番いい状態に整えられ、その中でただ眠る。
それが『添い寝屋』の正体だった。
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羊羽(プロフ) - たまりんさん» Sさんのとある部分にﾌｫｰｶｽしたくなって書いた話でした。私の中では一種のﾊｯﾋﾟｰｴﾝﾄﾞのつもりです。この歌、いいですよね。キレイ。楽しんでいただけたなら嬉しいです♪ (2020年3月15日 10時) (
レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ebi信号さん» 私としてはSさんの想いは悲しいかなって思うけど、添い寝屋さんの方はそうでもないんだよね。むしろひとときでも傍で温めてあげることができて幸せっていうか。ﾐﾓｻﾞ、好き。 (2020年3月15日 9時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 切ないけど素敵なお話ありがとうございました。あー、この歌好きだったなぁと遠い昔を思い出しました笑。 (2020年3月10日 19時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - 懐かしい歌詞(言葉)が並んでちょっとしんみりしたよ。悲しい想いだけど、他に動けないんだもんね、せめて想う人が楽に幸せになればって最後の愛情かなぁって私は思うよ。想う人に想われるって本当に奇跡だよね。明日は3/8、ミモザ買おうかな… (2020年3月7日 14時) (レス) id: 5da3552e51 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ebi信号さん» 私、相手が眠る前に寝ちゃうわ。きっと（笑）同じ空間に寝息立ててる人がいるだけで、つられて眠くなっちゃう。 (2020年2月24日 20時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽
| 作成日時：2020年2月22日 9時
