#37 嘘くさいガイドブック ページ37
会員制バーの奥まった部屋。
個室空間。
こじんまりとした、だけど重厚なスペース。
窓に向かってテーブルと大きなソファが誂えられていて。
窓の外は東京湾の霧がかった、ぼんやりとした夜景が少し先に見えて。
部屋の中は部屋の隅のランプとダウンライトで薄暗い飴色の光が落ちていて。
(こんなとこ、初めて来た・・・・・)
櫻井さんと並んでソファに腰掛け、目の前の夜景を眺めてる。
(もう会わないようにしようって決めたのに。)
なんで、今ここに、こうして櫻井さんと並んでるんだ・・・・・
ここに来て座ってから、櫻井さんは何も喋らない。
私も、何も喋らない。
ただただ、二人で目の前の景色を眺めてる。
櫻井さんがわざわざ、アユミ先輩経由をしてまで私を呼び出した理由が分かんなくて。
この前のライブ、アンコール前で勝手に帰ったことを何か言われるのかと思ったけど、それに対して何か言うわけでもなくって。
タクシーの中でも、怒ってる様子はなくって。
私は何を言っていいのか分からなくて、黙ったまま夜景を見つめる。
「―――――オレが誘うのって、迷惑？」
長い長い沈黙の後、櫻井さんの低い声がした。
迷惑じゃない。
迷惑なわけない。
・・・・・でも、『迷惑です。』って言うべきなんだ。今は。
分かってるのに言えない。
言いたくないって思ってる自分がいるから。
―――――分かってる。
全部、全部、小狡い自分のせいだって。
私、先が見えない恋愛なんてできない。
ちゃんといずれは結婚したい。
世間って呼ばれる当たり前のごとき顔したものが語る正解を打ち砕く勇気なんてない。
一般的に言われる平穏が送れるシステムから外れるなんて出来ない。
だから、自分の中に起こったマイノリティな感情は切り捨てることにしたの。
こんなの、一時の気の迷いだから。
こんなの、いつかは忘れる感情だから。
こんなの、ホンモノじゃないから。
櫻井さんが火を点けたタバコの煙がくゆる。
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羊羽(プロフ) - ともさん» なんだか結末含めて全体的に（もちろん狙ってなんですけど）もわっとしたｵﾊﾅｼなんですが、そこんとこが刺さってもらえたの嬉しいです♪（←勝手に「刺さった」って解釈してますけどｗ）ｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｽ！ (2020年3月1日 9時) (
レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - お互いが想いあって…大きな壁を乗り越えて結ばれた？最後にドキューンっと心に来ました！ (2020年2月28日 13時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ebi信号さん» ｲﾗｯｼｬｲﾏｾ！ebiちゃんの頭の中の二人がどんなになってるのかめっちゃ覗きたい…いやぁ、どんな風に進むのかな、この後のこの2人。私も知りたい。 (2019年12月4日 13時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - 限界だ！帰宅中だけど来ちゃったー！(*´∇｀) お互いの気持ちは確固たるものなのに、行動と空気は淡い薄桃の霧の上を歩いてるみたい、な？すごーくゆるくて、ゆーっくりだけど、光に向かって歩きだした二人って感じ？ 私の頭の中では既に妄想が始まっております。(笑) (2019年12月3日 23時) (レス) id: f0d357b11b (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - のりさん» よかった！その後の二人、是非妄想してください。何なら聞かせてください（^^）私こういう心許ないSさんと心許ない結末も意外と「まぁまぁ萌えるな…」って思った（笑）こちらこそありがとうございました☆ (2019年12月3日 8時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽
| 作成日時：2019年11月8日 16時
