#45 どんな時も ページ9
「A。」
朝、学校に行く前に珍しく翔ちゃんがうちにピンポンしてきた。
いつもは皆んなだいたい同じ時間に家を出て、学校に向かう道々でそれぞれが合流して通ってたんだけど、その日は翔ちゃんだけが少し早めの時間にうちにやって来た。
「おはよ、翔ちゃん。どしたの？早いね。」
「A、もし今度何かイヤなこと言われたりされたりしたら、オレに言え。」
「・・・・え？」
「絶対に言えよ？我慢したり黙ってたりすんなよ？オレが言い返してやるから！」
翔ちゃんが怒ったような心配そうな顔で、真剣に言ってきた。
それを告げるために、一人早くにうちに来てくれたんだった。
――――そうだ。
今の今まで忘れてた。
その時の翔ちゃんの顔と声を、鮮明に思い出した。
翔ちゃんは、ずっと優しい。
あの頃も。今も。
・・・・・・やばい。泣きそう。意識逸らさなきゃ。
そんなこと思いながらページめくってったら、修学旅行の写真が出てきた。
さっきの翔ちゃんが映ってる写真もまた出てきた。
(・・・・・・・あれ？)
その写真を見てたら、また何かをふっと思い出した感じになった。
植樹の時、何か翔ちゃんと喋ってた記憶。
写真を見つめながら、記憶をフィードバックする。
植樹。
青い空。
土を掘る感触。
あちこちで上がる楽しそうな声。
先生が説明する声。
翔ちゃんと、雅紀と、和也とで土を掘る。
苗木を植える。
「これ、何年くらいしたら周りの樹くらい大きくなるんだろね。」
植えた苗木に土をペタペタ被せながら私が言う。
「桃栗三年柿八年、っていうから、最低３年くらい？」
和也の声。
「３年でこんなでっかくなるか？」
翔ちゃんの声。
「どうせなら食べれるものの樹がよかったよね。」
雅紀の声。
「大人になった頃に来たら、これくらいになってるかな？」
私の声。
「じゃあさ、大人になったら一緒に見に来よう。」
翔ちゃんが『いいこと思いついた』みたいな楽しそうな顔して、私に言った。
―――――どうして私は。
どうして私は、こんな優しい、大切な記憶たちをもすぐ忘れるポンコツなんだ。
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羊羽(プロフ) - 柚さん» 柚さん！ﾆｭｰｽを見てのｺﾒﾝﾄありがとうございます(≧∀≦)そうなんですよね、あの辺一帯取り壊しになっちゃって…Zepp Tokyo…(泣) お話の中人たちは新しい場所での思い出を作っていることでしょう（知らんけど）読み返してもらえてるとか嬉しすぎます。 (2022年4月6日 7時) (
レス) id: e75b66a872 (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - こんばんは。先日ヴィーナスフォト？が取り壊されたニュースを見て，最初に思い浮かんだのがこのお話でした。地方在住で建物を全く知らないのに何故か寂しいです(笑)。それでまた読み返しています(^^)何回読んでも面白いです。素敵なお話をありがとうございます。 (2022年4月3日 21時) (レス) @page29 id: b83af50be8 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、はじめまして！読んでいただきましてｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｽ♪こんな幼馴染みに囲まれるとか、前世でどんだけ徳を積んだんでしょうね。この主人公（笑）楽しんでいただけたなら書き手として幸せです。他も楽しんでいただけますように。 (2020年2月3日 10時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - はじめまして。とっても素敵なお話しでした。翔ちゃんsideのお話も読ませて頂きました。2つとも読み終えて、お互いの好きって気持ちに気がついた瞬間が一緒だった事に、あー、結ばれて良かったなと思いました。他の作品も、楽しみです。 (2020年2月3日 9時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ともさん» ともさん、はじめまして！お立ち寄りいただきｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｽ。楽しんでもらえたなら嬉しいです♪どうしてもmouthとmouseを引っ掛けたかったもので、こういう話になりました（笑） (2020年1月28日 16時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽
| 作成日時：2019年12月14日 10時
