#51 ページ15
「え？」
「行かないで。」
「・・・・・A？」
「翔ちゃん行っちゃやだ。」
「ポカリとか要らない？何か飲んだ方がよくね？」
「アメリカ行かないで。」
「・・・・・え？」
「結婚しないで・・・・アメリカ赴任とか、そんなのまだ独りで行けばいいじゃん！こんな早く結婚しなくたっていいじゃん！」
ダメだ。もう止まんない。
吐き出したいのは胃液じゃなくって、ただのワガママだった。
突っ伏したまま、顔を伏せて隠したまま、心の奥底に押し付けてたモノが次々と飛び出してくるのを止めることができない。
翔ちゃんドン引きだな。って思いながらも、止めることができない。
「ちょ、Aなに言って・・・・」
「もうやだ、なんで今頃なんだよ気付いたの・・・前に一回気付いた時にちゃんと言ってれば何か違った・・・・？・・・・そんなことないよね、翔ちゃんの好みのタイプ、私と明後日の方向の人ばっかなんだもん、早く気付いてたって何も変わんなかっただろうけど、」
「A、おいって！」
「それでもイヤなんだよ、翔ちゃんが誰かと結婚しちゃうとか・・・！他の誰かと付き合ってるのは仕方ないって思えるけど、他の誰かと・・・・・」
他の誰かと翔ちゃんが人生作っていくなんて、イヤだ。
翔ちゃんの隣りにいるのは私でありたかった。
翔ちゃんと一緒にずっと笑ってたかった。
支離滅裂な言葉を吐き散らかした私は、自分の膝に突っ伏したまま、いっちばん奥の奥にあった言葉を口にした。
「・・・・・翔ちゃんが私の傍からいなくなったらヤだ・・・・。」
そこからはもう、涙が溢れて声にならない。
ヤダ。
翔ちゃん行かないで。行かないで。行かないで。
その時、フワッと肩に腕が回った。
優しくて、温かい腕。
掌が私の頭を柔らかく包んだ。
突っ伏した顔のすぐ横で、翔ちゃんの声がした。
「・・・・・どこにも行かねーよ(笑)」
ポンポンポン、とその掌が頭を優しく叩く。
「Aの傍にいるに決まってんじゃん。」
私はその状態で泣き出した。
月曜日の朝の。
通勤時間帯の駅のホームで。
翔ちゃんの腕に守られながら泣いた。
翔ちゃんの腕と、空から降り注ぐ陽射しがとってもあたたかい。
#52 輝いてるのはイタズラな→←#50 さよならが聞きたいんじゃなくて
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羊羽(プロフ) - 柚さん» 柚さん！ﾆｭｰｽを見てのｺﾒﾝﾄありがとうございます(≧∀≦)そうなんですよね、あの辺一帯取り壊しになっちゃって…Zepp Tokyo…(泣) お話の中人たちは新しい場所での思い出を作っていることでしょう（知らんけど）読み返してもらえてるとか嬉しすぎます。 (2022年4月6日 7時) (
レス) id: e75b66a872 (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - こんばんは。先日ヴィーナスフォト？が取り壊されたニュースを見て，最初に思い浮かんだのがこのお話でした。地方在住で建物を全く知らないのに何故か寂しいです(笑)。それでまた読み返しています(^^)何回読んでも面白いです。素敵なお話をありがとうございます。 (2022年4月3日 21時) (レス) @page29 id: b83af50be8 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、はじめまして！読んでいただきましてｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｽ♪こんな幼馴染みに囲まれるとか、前世でどんだけ徳を積んだんでしょうね。この主人公（笑）楽しんでいただけたなら書き手として幸せです。他も楽しんでいただけますように。 (2020年2月3日 10時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - はじめまして。とっても素敵なお話しでした。翔ちゃんsideのお話も読ませて頂きました。2つとも読み終えて、お互いの好きって気持ちに気がついた瞬間が一緒だった事に、あー、結ばれて良かったなと思いました。他の作品も、楽しみです。 (2020年2月3日 9時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ともさん» ともさん、はじめまして！お立ち寄りいただきｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｽ。楽しんでもらえたなら嬉しいです♪どうしてもmouthとmouseを引っ掛けたかったもので、こういう話になりました（笑） (2020年1月28日 16時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽
| 作成日時：2019年12月14日 10時
