Side B #15 ページ32
それと同時に、気配を感じたのか、彼女がこちらを振り返った。
ぶつかった視線が、結果先を促す。
「――――何してんの？」
「お手洗い、どっちだったかなと思って。」
それで突っ立ってのか(苦笑)
Aさん、それは。
「って、方向音痴？(笑)」
Aさんはちょっと苦笑いしながら、
「部屋を出ると、どっちから来たのか分かんなくなるんだよね。」
「それを『方向音痴』って言うんですけど(苦笑)。トイレはあっち。」
「あっちか(笑)。ありがと。」
俺が指差した方へ行こうとする彼女の肩を、気付くと俺の手が掴んでた。
彼女が振り返る。
目が合う。
自分の中で何かが「カチリ。」と音を立てたのが聴こえた。
酔って目の周りが少し赤く、瞳が潤んでるAさんは驚いて、その次に困惑と躊躇と混じった顔をした。
お互い声は出さず、ただ見つめる。
たかだか数秒の世界。
でも、時間に濃度ってものがもしあるなら、この数秒は凝縮された一瞬の時間で。
初めてちゃんと、視線が絡まった。って気がした。
無意識が彼女の頭に手をかけさせ、グイッと自分の方に引き寄せる。
彼女が小さく息を飲んだ音が聴こえた。
誰にも聴こえないよう伝えようと耳元に口を寄せると、あの柔らかい香りが誘惑するように鼻腔をくすぐる。
同時に、『この人、結婚してる。』って事実が脳裏に浮かぶ。
ほんの一瞬の躊躇を、なぎ倒すような衝動が更に強引にさせる。
すぐ傍まで近付いたその頬に口づけてしまいそうになるのを押さえて、小さく呟く。
「・・・・・・・あそこじゃ渡せないから。」
それで止めるつもりだった。
後は彼女に任せるつもりだった。
Aさんの手に、ずっとポケットの中にいたものを握らせた時。
それまで息を飲んだまま押し留めていた息が微かに、彼女の口から洩れた。
その息が、俺の首にかかった。
ただそれだけのことが、全身を痺れさせた。
「連絡して。」
瀬戸際の言葉が、勝手に口から零れた。
堕ちる瞬間なんて、こんな一瞬なのかもしれない。
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羊羽(プロフ) - ebi信号さん» いえ、全然今まで通りで大丈夫です。好きなように読んで！私自身も冒頭の説明のところは義務感で埋めてるので、同じようなことしか言ってない（笑）見出しは読んでくれたら嬉しい（なんでそこにそんな力入れる） (2019年11月21日 15時) (
レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - 読みたいばっかりが頭にあって、なんて失礼な事してたんだって、反省しました！このコメント、コメ返から、キチンと読んでからお話に行くようにしたよー。順番は意識しないで読むけど、も。(ランダム感も結構楽しいんだよねー。) (2019年11月21日 14時) (レス) id: 99a6a11134 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ebi信号さん» なんならﾗﾌﾞｿｰのそもそもにもなります、って書いておこうかなって思った（笑）私もね、話書きたいのに「冒頭の説明…」って思いながら埋めてます、あの部分（ほぼ義務感）見出し（『最初から読む』の下のとこ）の言葉選ぶ作業は好き。 (2019年11月21日 8時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - よ、良かったぁー(>_<) こいつ何言ってんだ！ってドン引きされてるかも…って不安だったの。(T-T)ｳｩ,ﾖｶｯﾀ (2019年11月20日 14時) (レス) id: 99a6a11134 (このIDを非表示/違反報告)
羊羽(プロフ) - ebi信号さん» なる！納得w設定同じ感じだから有り得る（いいのかそれで）ﾗﾌﾞｿｰのそもそもの短編もあるにはあるんだけど…ﾘﾝｸさせるかは置いといて、今度出してみようかな。言葉の説明文は読んでもらえてるならいーや。あそこが一番時間かかってるから（笑） (2019年11月20日 12時) (レス) id: 9e1708fadb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羊羽
| 作成日時：2015年12月10日 16時
