黄色短編集 (ページ31)

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スピカ　　　☆4 ページ31

曲が終わる。
シャッフルなのでランダムに選ばれた歌に変わった。

「この歌は知らないなー。」

「カップリングだからね。私はこの歌好きだよ。」

「ふーん。」

「さっき、何て言ったの？」

「さっき？」

「ゲームやってて・・・・・」

「あー、『腹減ったな。』って言った。」

「お腹空いたの？！さっきちゃんと食べとかないから、今頃減ってくるんだよ。」

「あの時はあんまり腹空いてなかったんだもん。仕方ないじゃん。」

「もー・・・・何かあったっけ？冷蔵庫に。」

「分かんね。」

「ちょっと見てくるよ。」

まだ終わらない歌に少し後ろ髪引かれながらも停止ボタン押して、もう片方のイヤホンも外して立ち上がろうとしたら、

「いや、いいわ。」

左手を掴まれて、立ち上がるのを阻止された。

「え、何で？お腹空いたんでしょ？」

「空いた気がしただけかもしんない(笑)」

「自分のお腹のことなのに、何そのテキトーさ！(笑)」

「ない？そーいうの。」

「たいして寒くないのについ『寒い！』、みたいな？」

「そうそう(笑)」

「でもやっぱり、そう思ったってことはお腹減ってんじゃないの？」

「んー・・・・とりあえず今はいいわ。」

そう言って、私をギュッと抱きしめた。

右肩に彼の顎が乗っかる。
少し体を預けてくるから、その分重みを感じる。

その重みは、数少ない私たちの現実の実感だ。