黄色短編集 (ページ19)

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Waiting for you　　　☆3 ページ19

――――と。

「何で付いてくんのよ！」

エントランスで鍵を出そうとしたら、びしょ濡れ男も横に立って私が鍵出すのを待ってる。

それには答えず、微笑むだけ。

やっぱ、頭おかしい系か？

「ほら、傘上げたんだから、もう家に帰りなさい。」

片手で「シッシッ！」みたいに払っても、ニコリと微笑んでくる。

はぐらかしてる感が、何かムカつくわー。

「ちょっと！ホント帰りなさいってば！！」

その時、中から住人が出てきて、こちらを見た。

――――めっちゃ胡散臭そうな目で。

ええー？
何か変な噂、立てられちゃう？私(汗)

ずぶ濡れの男とエントランスで揉めてる(揉めてないけど！)女、みたいに言われちゃう？！

違うのよ！
これは私のツレなんかじゃないのよ！！

だけど、この状況はきっとそうとしか取ってもらえない！！！(泣)

世間体をやたらと気にする私は、つい。

「んもー！来るならちゃんと連絡入れなさいよ。こんな雨の中ずぶ濡れで待ってなくてもいいのに！」

って、演技してしまった。

その住人は「あ、そーいうこと？」みたいに、そのまま通り過ぎていった。
やり過ごせたらしい。セーフ。

しかし。

犬人間の目に、期待と「してやったり」を浮かべさせる運びになってしまった。

「オレ、善良だから大丈夫。」

にっこり笑って言う。

あ・ほ・か！
自分で自分のこと「善良」って言う人間なんて、信用できるかっ！

だけど、微笑みながら私を覗き込むその子の目が薄茶で。
深い何かを湛えてて。

それが実家で飼ってた犬(柴犬)にそっくりで。

そして、その犬はつい最近天国へと旅立ってしまって。

「・・・・・・・とりあえず、玄関前でタオルだけは貸してあげるから。」

エントランスをつい、通してしまった。