黄色短編集 (ページ28)

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スピカ　　　☆１ページ28

ここから眺めるここでの時間はいつも、何一つ変わらない。
今日も昨日と同じものが、同じように流れてる。

もちろん当然、それは錯覚なんだけど。

そんな錯覚さえ覚えてしまうほど今日見る景色はいつもと全く同じで、そのことが何だかすごくおかしくなる。

目に入る景色が毎日同じって、スゴクない？？
間違い探しができそうだ。

正面に見える大きな掃出し窓の外には、空しか広がってない。

とは言っても、カーテンがだいたいいつも閉まってる。朝も昼も夜も。

　『開ケレバ悪霊ガ忍ビ込ンデ来ルカラ、決シテ開ケテハナラナイ。』

そんなオドロオドロしい言い伝えを守っているかのように、常に閉められている。

まぁ、たまに開けてもただ東京の空がひたすら見えるだけで、別に不穏な悪霊に遭遇したことはないけど。

でも見つかったら最後な、それこそ取り憑いて離れない悪霊みたいな他者の視線がどこにあるか分からないのは事実だから、カーテンは昨日と同じように今日も閉められている。

そして完全には合わさってないカーテンの隙間からは、今は濃紺とも黒ともつかないような暗い夜が垣間見える。

いつもと変わらないその光景を確認して、目線を少し移動する。

その窓の手前で、TVに向かってピコピコとゲームしてる猫背な背中が座ってる。