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「どーぞー。」
数学準備室で補習用の問題を探していると、ドアをノックする音がした。
開いていた問題集を閉じて、返事する。
あの日以来、相葉くんはここには来なくなった。
だから、普通に生徒が質問に来たのだと思った。
「失礼します。」
入ってきたのは、櫻井くんだった。
――――意外な子が来た。
櫻井くんは、副担任で持ってるクラスの生徒で、生徒会長してる子で。
文系だけど数学もほぼ満点みたいな子(ここの学校は、文系選択であっても3年にも数学を履修させる、なかなかキツいカリキュラムなんだけど。)
とにかく、出来る。
勉強も、それ以外も。
イヤミなくらい。
国立T大だって受かるだろうって言われてるけど、本人の希望はKO大経済学部の指定校推薦ってことだった。
その櫻井くんが、質問？
でも手に何も持ってない。
無言のままスタスタと、私の椅子の横までやってきた。
私も椅子を90°回して、仕方なく向き合う。
櫻井くんは立ったままだから、上から見下ろす状態。
・・・・何か苦手なんだよね、この子。
友達とバカやってても、どこか少し引いた目でいる感じがするっていうか。
人当りはいいくせに、腹の底は本当のところ掴めないっていうか。
・・・・・私に何の用だろ。
「A先生？」
顔の割に低い声。
威圧感がちょっとある。
「・・・・・何でしょう。」
櫻井くんは横の小山先生の椅子をグイッと引っ張って、そこに座った。
目線の高さが同じになっても、やっぱり威圧感。
「先生、相葉雅紀と付き合ってるでしょ。」
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作者名：羊羽
| 作成日時：2015年3月20日 11時
