アイコトバ Ⅰ (ページ28)

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角を曲がってまだしばらく歩いて、そこで後ろを振り返る。

誰もいない。

ホーッと、溜息をつく。

「・・・・さっきの男、」

相葉くんは、肩から腕を外して、また手を握った。

「何か、ちょっと様子変なヤツだったね。」

ああ。
やっぱり気づいてたんだ。

「うん・・・・電車降りた辺りから、何か後ろ付いてくるなって・・・・」

「今までにもあった？そーいうこと。」

「ううん。今日が初めて。」

「・・・・・うーん。」

「あ、あの・・・・本当にごめんね。迷惑かけちゃって・・・・もう付いてきてないみたいだし、ここからは自分で・・・」

「何言ってんの？！危ないじゃん！暗いんだし、人通りだってあんまないんだし。送ってくよ、家まで。」

「でも、それじゃ・・・・(汗)」

「こんなとこで別れたら、逆に心配で困るし！家、どこ？」

ううー・・・・・

こんな手助けしてもらって、何も言い返せるワケがない。

「・・・・・こっち。」

相葉くんの右手は、私の左手を握ったまま。

問題解きながらシャーペン走らせてる時も、指長いなぁ、意外と大きな手だなぁ、ってぼんやりと思ってたけど。

実際握られると完全に「オトコ」の手で。

もう、生徒だとか、7つ下だとか、まだ子供だって感じじゃ全然なくって。

不謹慎にもドキドキしてる自分がいて、何かもう全てを何も考えたくない！ヤダ！こんな自分！！

って思ってる時に。

「―――へへっ(笑)」

って相葉くんが笑った。

え？何？？？

顔を見上げると、

「センセーの家、分かっちゃうね～(笑)」

・・・・・そーだ！その通りだ！！！

「やっぱ、ここまででいい！」

「ダメだっつーの。まだ後ろから付いてきてるかもしんないよ？」

・・・・・・。

イタイところを突いてくる。

結局、握った手を振りほどくことも出来ないままマンションに着いた。

「ここかぁ～。意外とうちから近いじゃん！」

「えっ！」

「意外と、だよ(笑)徒歩の距離じゃないけどね。」

歩いての距離じゃないと聞いてホッとしながらも、何て答えればいーんだ？、と思ってると。