アイコトバ Ⅰ (ページ2)

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俺も頭を下げて、先生が書く式を見つめる。
先生はサラサラとボールペンで計算しながら説明してくれた。

あ。ネイルしてる。
先生って、ネイルしてもいいんだ。

今までそんなの、気にして見たこともなかったけど。

着てる服を横目で眺める。

白のシャツにカーディガン羽織って。
下は？
スカートかな。

うー、ここからじゃ見えないや。

「・・・で、こうなる、と。分かる？」

急に先生の顔がこっち向いて、訊かれて我に返る。

慌てて問題を見る。

「・・・・・・。」

全然聞いてなかったから返答のしようがなくて、黙っちゃう。

「・・・・・・。」

先生はずっとオレの返事待ちで黙ってる。

「・・・・・・。」

「どこが分からない？」

えーとね。
ちょっと待って？

『先生を観察してたから、話聞いてなかった。』

なんて言えないしねー(苦笑)

「・・・・・あー！分かった！」

勢いよく顔を上げたら、先生と目が合った。

メガネの奥で真っ黒な黒目がパチパチって瞬きした。

間近で見たら、遠目で見るよりあどけない感じがする。

・・・・・何歳なんだろ？

「分かった？大丈夫？」

「あ、うん。大丈夫です。分かった。」

「そう？」

先生はそう言って、ニコッと笑った。

・・・・・俺らの学年の中にいたっけ、この先生。

ザッと机の上に目を走らせる。

PC。

教科書。数Ⅰ、数Ⅲの。
・・・・１年受け持ち？いや、３年？

プリントがちらほら。

他には・・・・ファイル。

あ！名前書いてあるじゃん。

『A』。

A先生。って言うんだー。

「ん？まだ質問ある？」

いつまでもそこを動かないオレに、A先生は言った。

「ううん、大丈夫。ありがとうございました～。」

「はーい。」

ドアを閉めて、廊下を歩きながら考える。

・・・・・４月の最初に学校紹介みたいなパンフ渡されたよな？

あれに教職員載ってなかったっけ？

家に帰って探そ！

A先生。

覚えた名前を頭の中で繰り返す。

いー匂いだったなぁ。Aセンセ。