さよならの教室【伏黒恵】 (ページ9)

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「……照れるなあ」
「……おお」

耳まで真っ赤に染めてAは言う。顔が熱いのも、真っ赤なのも、赤い夕日のせいということにしよう。

「でも、私も伏黒のこと好き」

Aはそう言って軽く微笑んだ。いつもと違って優しい笑顔だったから、ちょっとだけびっくりした。

「呪術師って大変なの？」
「そりゃもう、めちゃくちゃ」
「というか、伏黒の高校どこにあるの？」
「東京。ここからまあまあ遠い」
「えぇ！いいなあ東京。都会じゃん。じゃあここと東京からじゃあ、中々会えないね」
「そうだな。まあ、今はスマホがあるし」
確かに」

Aは頬に指を当て「ああ、でも」と笑いを堪えきれていない声で言った。

「伏黒、すぐ音信不通になりそう」
「お前、俺のことなんだと思ってんだよ」

呆れた顔で言ったとき、俺のスマホから着信音が鳴り出した。Aにごめんと一言言って、電話に出た。補助監督から、今任務の場所についたという電話だった。

「俺、そろそろ戻ろないと」
「私も帰ろうかな。結構ここに居たね」

うん、と俺は頷き、それから俺は「A、」と名前を呼んだ。スマホで時間を確認していたAは、視線を俺に向ける。

「今日、楽しかった。ありがと」

我ながら不器用すぎる伝え方だな、と思った。俺は今も昔も変わらず呆れるほど不器用で、無愛想だ。

私も、と笑うAに、俺は安堵しながらも軽く微笑んだ。

「会えても会えなくても、わたし伏黒のこと絶対、おばあちゃんになっても忘れないから」
「俺も忘れない。すきだ、A」
「わたしも」

そして俺はAの指を絡めて、そっと額に口付けた。