さよならの教室【伏黒恵】 (ページ8)

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そう言ったAの目からは大粒の涙が溢れていて、俺は目を丸くしてAを横目で見た。ころころと表情が変わるやつだと思うと同時に、なんでこんなに悲しんでいるんだと不思議に思った。

「……悲しませて、ごめん」
「いや、私が勝手に悲しくなって、ごめん」
「いいや、謝んな。あと、お前俺のこと見透かしすぎだろ」

俺はAの前に行って、正面からAを見つめた。潤んだ瞳は宝石みたいに綺麗で、透き通っている。

「俺のこと、知られたくなかったんだ。呪術界のことを知ってほしくなかった。お前には普通に、幸せに生きていてほしいんだ。だって」

こんなに素直に気持ちを打ち明けたのは久しぶりだった。胸の内にある感情を、しっかりと言葉にして輪郭をはっきりさせれる。

「だって、……A、あのさ、俺は今から俺らしくないことを言う」
「ほお、楽しみですね伏黒クン」
「うっせ」

恥ずかしくなって俯いた。それから深呼吸をし、もう一度Aの瞳を真っ直ぐ見つめる。

「Aのことが、好きだったから」

ずっと見て見ぬ振りしていたこの感情も、やっと言葉にすることができるのだ。