12.平和、容姿 ページ13
彼女に言って、今日はぼくが片付けをしている。
よく考えると、こんなに平穏を享受したのは久しぶりだ。
前なら、もっとこう、時間を有効に回さなければ、とか、できるだけ人と関わらなくしなければ、とか、そういうつまらない概念にとらわれていた。
しかし、彼女ではない人間のところへ来ていたらどうしていたのだろう。
突然女の部屋に見知らぬ男が落ちてきて、驚かない人間が、いるのだろうか。いや、いたが。茶碗を持つ手に力が入る。
とりあえずきちんとした常識を持っている人間なら通報するなり何なりするのだろう。そうしてぼくは何もわからないまんま、薄暗く埃臭い部屋に入れられるのだ。
今、テレビを見る彼女の後ろ姿を眺めて呑気に皿を洗っているぼくは、一応幸福なのだろうな。
「あ、え?吉良さん、吉良さんたいへんです、って、あ。」
皿洗いを終えて彼女の座るソファに腰掛けたぼくの腕を、白くてきれいな手で掴むA。ああああやめてくれおかしくなる。
「吉良さん、シャツ、」
言われるがままシャツに目をやると、縦縞に点々と水の跡が付いていた。
ああ、ぼうっとしすぎた、面倒なことをした、と、心の中だけでぼやいた。
「………、乾かしたらお買い物、行きますか。」
ぼくは頷いた。
白いシャツは、案の定すぐに乾いた。今日はとてもいい天気だし、まだ午前だからだろう。
上半身が寒々しい状態になったから、と応急処置で彼女に被せられた毛布を取っ払って再びシャツに腕を通す。ほんとうは、ぼくはこのシャツを早いところ洗濯機に突っ込んで早いところ柔軟剤の香りがする新しいシャツに着替えたいところなのだけれど、彼女はぼくがこの家に住まう上で必要なものを買い揃えるためだけに外へ出るというのだから、そんなことは容易に口にはできない。
Aはブラウスの上にパーカーを羽織った。緩く纏めた白い髪に押し付けるように、帽子をかぶって、目の赤を押し込むように、眼鏡までした。
「ずいぶん重装備じゃあないか」
「そうです。この容姿はどうしても目立つもので」
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毎回台詞で終わらせてるのは意図的なんですよ!ほんとですよ!もし違ってたら桜の木の下に埋めてもらって構いませんよ!
更新遅れてすみませんがんばるので見゛捨゛て゛な゛いでください゛
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - 遅れてすみません、完結おメメタァです!最後も含めて素晴らしい作品でした!短編集も面白くて愛読させて頂いてます……!忙しいとは思いますが体調をくずされませんようお元気でお過ごしください!長文失礼しました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: 6e12f91009 (このIDを非表示/違反報告)
jojo悪大好き系女子(???????)?(プロフ) - ものすごい吉良しゃんが可愛…とりま更新待ってます! (2017年1月23日 1時) (レス) id: cc963ba128 (このIDを非表示/違反報告)
三枝(プロフ) - 名無しさん柑橘類さん» ありがとうございます!あほほど更新遅いですがじわじわ頑張ります…!終焉まで見守ってくださると嬉しいです! (2016年8月22日 20時) (レス) id: e57f69624b (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん柑橘類 - とても面白いです!無理のない程度に更新頑張ってくださいね! (2016年8月22日 14時) (レス) id: 46f619a4c2 (このIDを非表示/違反報告)
三枝(プロフ) - 令さん» ありがとうございます…!少女漫画みたいなやつになれ〜と思って書いてるのでそう言っていただけて本望です…!!!更新も疎かにしないで頑張ろうと思います! (2016年6月5日 18時) (レス) id: e57f69624b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三枝 | 作成日時:2015年11月22日 15時