10.紅茶、感情 ページ11
「ありがとう、いただくよ」
湯気のたつそれからは、甘い砂糖の香がした。くまが描かれた黄色のマグカップに口をつける。やはり味も甘ったるくて、なんだか喉が疼く。だけれど、不快なものじゃあ断じてなかった。
もう一口飲むと、彼女はぼくに言った。
「吉良さん、どうしてここにいたのか覚えてないんですよね？」
「…ああ、すまないね」
「そうですか。いつ帰れるかもわからないんですね、」
「………そうだね」
心臓のあたりがきゅう、となった。
彼女はぼくに帰って欲しいと思っているのだろうか。
「じゃあ、わかりました。
しばらくは、わたしも吉良さんも寂しい思いをすることはないんですから、メリットはそれですね」
雪みたいな髪を揺らして、へらりと笑った彼女の向かいに座っているぼくは、脈が異常に早いことに気がついた。どくどくどくどく、身体中に熱血が送り込まれているみたいだ。
「…よろしく、A。」
「はい、吉良、吉影さん」
下の名前をはじめて呼ばれた。しばらく呼ばれていなかった名なので、左胸の心臓がふわりと浮いたみたいな、変な気持ちだ。
これから彼女と暮らしていくのに、なんの不満も抱いていないぼくに、ぼくは違和感を覚える。
自分はこんなに単純な人間だっただろうか、とおもった。
それから冷めかかっていた紅茶を飲みながらテレビを見て、話をして、お風呂に入って、当たり前のように布団に入った。
やはり落ち着かないのだが、致し方ない。そう自分に言い聞かせて、電気を消す(電気スイッチの場所がわからなくて10分前くらいに彼女に聞いた)。
目を閉じていろいろ考えた。
今日はいろいろなことがありすぎたのだ。前よりずうっと波乱万丈なような気がする。
杜王町でぼくは、確かに死んだ、しんだ、死んだ、………。
あっちの世界ではぼくは、どうなっているのだろう。ほんとうのぼくを愛してくれる人なんていなかったけれど、ぼくが消えてどう思うのだろう。
だけれどぼくはここにきて後悔なんかしていない。
今更善人ぶるつもりは微塵もないが、来たのが彼女の家でよかった。
勿論あれほどの手の持ち主だからだという理由もあるが、もっと別な、なんというか、彼女のそばにいるといやに安心する。心の拠り所のような、そんな存在に、彼女のもとへ来て1日でなりかけている。
ぼくはどうかしてしまったのだろうな。
いままで人間にこんな感情を抱くことなんてなかったのに、…
顔が熱くなってきたような気がしたので、布団に潜り込んだ。
ー
10話！
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - 遅れてすみません、完結おメメタァです！最後も含めて素晴らしい作品でした！短編集も面白くて愛読させて頂いてます……！忙しいとは思いますが体調をくずされませんようお元気でお過ごしください！長文失礼しました！ (2020年6月14日 18時) (
レス) id: 6e12f91009 (このIDを非表示/違反報告)
jojo悪大好き系女子(???????)?(プロフ) - ものすごい吉良しゃんが可愛…とりま更新待ってます！ (2017年1月23日 1時) (レス) id: cc963ba128 (このIDを非表示/違反報告)
三枝(プロフ) - 名無しさん柑橘類さん» ありがとうございます！あほほど更新遅いですがじわじわ頑張ります…！終焉まで見守ってくださると嬉しいです！ (2016年8月22日 20時) (レス) id: e57f69624b (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん柑橘類 - とても面白いです！無理のない程度に更新頑張ってくださいね！ (2016年8月22日 14時) (レス) id: 46f619a4c2 (このIDを非表示/違反報告)
三枝(プロフ) - 令さん» ありがとうございます…！少女漫画みたいなやつになれ〜と思って書いてるのでそう言っていただけて本望です…！！！更新も疎かにしないで頑張ろうと思います！ (2016年6月5日 18時) (レス) id: e57f69624b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三枝 | 作成日時：2015年11月22日 15時
