あなたじゃないと。3

43おとぎ話の悪役の ページ44

月島side





テレビも雑誌も新聞も、

書いてあるのは二宮のことばかり。



見る度に心がギュッと締め付けられるように苦しい。










『婚約を解消して欲しい?!何を言っているのですか!!』


『そうですわ!!だいたい、そんなこと菅原様が…………。』



『菅原様には先程お話をしに伺いました。婚約解消のことも許可を……。』







Aさんが菅原さんを想っていても、婚約というもので縛っておけばいいやと、どこかで安心していた。


いまさらどうすることもできないだろうと。





なのに、なんでこうなったんだ。









『解消だなんて勝手なこと、下手したらこの世界で生きていくことも出来なくなりますよ。』






やっぱり素直になれなくて。


いつもいつも嫌味ったらしく、トゲのある言い方しか出来なくて。









『わかってる。でも、孝支が好きなの。』








でも、そんな僕にいつもAさんは優しく笑いかけてくれた。









優しくなりたいと思うんです、貴方の笑顔を見ていると。


素直になりたいと思うんです、貴方のそばにいると。









『あーあ、なんかどうでもよくなっちゃいました。いいですよ、婚約解消しましょう。』




『蛍！何言って…………!!』






うるさい、うるさい。


仕方ないでしょ、こうするしかないんだから。






おとぎ話でいうお姫様がAさんなら、

王子様は菅原さん。





なら、俺は、









『精々、頑張ってくださいね。』









悪役だろう。

















「頑張りすぎですよ、Aさん。」







あなたとの婚約を解消したこと後悔してませんよ。





でも一つ、一つだけ。














「好きだと伝えたかったな。」









素直になれない、ひねくれ者の悪役の小さな想いは、






雪のように小さく溶けていった。

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