あなたじゃないと。3

41我が子 ページ42

久しぶりに帰ってきた我が家に、ホッと一息つく。





「はい、コーヒーどうぞ。」



「ありがとう。」





一口飲めば、じんわりとほろ苦い味が広がってゆく。







「Aが突然、話があるっていってきたときは何事かと思ったわ。」


「全くだ。」
















『お父さん、お母さん、お話があります。





二宮を立て直すために協力していただけませんか？』









しっかりとした意志を持った綺麗な瞳をした娘の言葉。








「まさか、アメリカに行くとはな。事業が成功する保証なんてどこにもないのに。」




「でも成功したじゃない。Aは本当にすごい子よ。」






クスリと笑う彼女に呆れ混じりのため息が出た。








「いつからあんな、おてんばになったんだ。」









「…………子は親に似るのよ。」







ふっと目を細め懐かしそうに笑う。



思い出しているのはきっと、俺たちの若い頃。








「周りの反対を押し切って、駆け落ち同然で結婚したものね、私たち。」




「あの時は大変だったな。」







悩み、泣き、苦しみ。



ただがむしゃらに、手探りに、

二人で支えあって生きてきた。







「Aにはそんな苦労をして欲しくなかったんだけどな…………。」







ゆらゆらと揺れる湯気を見ながら、ぽつり、言葉を落とす。





そんな俺を見て、ふわっと笑う彼女。













「大切な人のためなら、苦労を苦労だなんて思わないわよ。」









Aはお前に似たな。




優しい笑顔がそっくりだ。











「私だって、そうだったもの。」

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