36夕日を背にして ページ37
ストンと徹の言葉が落ちてくる。
その声があまりにも優しくて、思わず顔をあげた。
ムニッ
「なにひゅんの、とほる。」
両頬を引っ張られている私の顔は、さぞひどいことだろう。
軽く睨んでみても離すわけなく、何回も伸ばしている。
伸びたまま戻らなかったらどうしてくれるんだ。
パッと手を離され、頬がひりひりと痛む。
及「ていうか、幸せにならなきゃだめ!」
「だめって…………。」
及「なんせ、この俺をフッたんだからね!!こ〜んな優しくて、紳士的で、かっこいい奴いないよ?」
「紳士的な人は浮気なんてしません。」
及「うっ…………。」
なんで自ら掘り起こしたのかな。
図星を突かれて口ごもる彼に思わず笑ってしまった。
及「Aは大切な人のために、自分の気持ちに素直に動ける子だよ。
だから、ちゃんとわかってると思う。今やるべきこと。」
ふわっと笑った彼の言葉に心臓が大きく脈を打つ。
ほんと、そのとおりだよ。
怖くて動けないなんて、私らしくない。
やるべきことを、今、やらなくちゃ。
「徹、いい男になったね。」
そう言うと、一瞬目を見開いて、ニヤッといたずらっ子のように笑う。
及「俺をフッたのが惜しくなっちゃった?」
「いや、全然。」
及「ひどっ!!」
クスクスと笑い合う。
あぁ、オレンジ色の光が暖かいなぁ。
及「歩奈のおかげかな。」
徹は今までで一番優しい笑顔を見せた。
「徹、ありがとう。
私、行かなきゃ、話さなきゃ。
やらなきゃいけないことがある。」
及「うん、大丈夫だよ、Aなら。
行っておいで。」
あの時と同じ言葉、
あの時と同じ背中を押す手、
変わったのは、なんだろう。
手の暖かさを、夕日の暖かさを感じながら家へ走る。
家へ帰ると両親がいた。
「お父さん、お母さん、お話があります。」
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びじゅ - このお話に出会えて良かったです (2019年7月24日 18時) (レス) id: 29491d0de8 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 奏 - とても素敵な物語でした。ありがとうございました (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4558ce44e2 (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね - 最高でしたぁぁぁ!!! (2018年9月13日 0時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ アルグ - 面白かったです!最高(・∀・)イイ!! (2017年1月1日 11時) (レス) id: a8d11639cf (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - すごい感動しました…!その才能、分けてほしいです!! (2016年10月19日 2時) (レス) id: f6717c82fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らるこ | 作成日時:2014年10月15日 23時