あなたじゃないと。3

34黒に光を ページ35

さっきまで騒がしかった体育館が不気味なくらいに静まり返る。






今まで隠していたものが、

みんなの笑顔が、





ガラガラと音を立てて崩れていく。







澤「Aの婚約者はスガだろ？」


月「婚約者だった、ですけどね。」


菅「どういうことだよ。」





低く、怒りを含んだ声。


それに動じることなく、蛍は怪しげに微笑んだ。







月「どういうこともなにも、婚約を解消したのは菅原財閥でしょう。」



菅「婚約を………………解消？」





今にも消えてしまいそうな声。


心臓が押しつぶされるように痛くなる。






月「理由は御両親にでも聞けばいいんじゃないですか？



あぁ、それともう一つ。」






ちらりと横目で私を見る。



酷く濁った目、光なんて見えやしない。









月「僕とAさんを婚約させたのも、菅原財閥ですよ。」






………………………え？







そんなの知らない、聞いてない。






じわじわと黒いものがわたしの心を蝕んでいく。









月「やっぱり、Aさん知らなかったんですね。」






ケタケタと笑う。


そんな彼を見て、クラッとめまいがした。









私ね、いつも素っ気なくてぶっきらぼうな蛍が笑ってくれるのが嬉しかった。



綺麗な笑顔だなって思ってた。









でも、そんな風に笑う蛍、












見たくないなぁ。









月「まだ、菅原さんと婚約者に戻れるとか考えてるなら諦めた方がいいですよ。







無駄です。」









言いたいことはたくさんあるのに、




言葉が出てこないのは、









蛍が怖いから？








それとも、









私自身、心のどこかで無理だと思っているから？









ただ呆然と立ち尽くし、心が真っ黒に染まっていく。







そんな心を照らすように、












右手が暖かさに包まれた。

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