あなたじゃないと。3 (ページ29)

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28僕の手からすり抜けてページ29

月島side

僕を見て目を見開く彼女。

僕も驚いたよ。

なんせ、

「おや？もう知り合いなのか？」

「さすが、婚約者。運命なんですかねぇ。」

好きな人の婚約者になれるなんてね。

「………………こん、やくしゃ？」

今にも消え入りそうな声でつぶやく。

「あぁ、そうだよ。
これからは月島グループと二宮グループが協力していくべきなんだ。」

「なんで?!だって私には……」

「A、お客様の前だぞ。」

すみません。と納得がいかないという顔をして席につく。

それから、婚約や今後についての話をしたが、

Aさんはうつむいたまま、一言も喋らなかった。

「では、後はごゆっくり。」

嫌な笑みを浮かべた双方の両親が部屋を出ていき、僕とAさんの二人っきりになった。

月「Aさん。Aさん、こっちを向いてください。」

ピクリともしない彼女。

僕と顔を合わせるのもいやってことか。

ふーっと息を吐いて深くソファーに座る。

「……………いつ、婚約のこと知ったの？」

月「合宿の少し前らへんですかね。

二宮が落ちていることは把握していたんで菅原さんとは婚約解消するだろうとは思ってましたけど。」

トゲトゲとした言い方をしてしまった自分に後悔する。

なんでこうひねくれているんだろう。

素直に、あなたと婚約できて嬉しいといえばいいのに。

それでも、出てくるのは心とは裏腹の言葉。

月「ま、このまま婚約していたって菅原財閥を潰してしまうだけでしょうけど。」

「………そう、だねっ…………。」

突然立ち上がり部屋を出ていこうとするAさんの腕を掴む。

そんなに僕が嫌ですか。

そんなにあの人がいいですか。

誰を想って泣いてるんですか。

彼女の目から溢れる雫を見て、一瞬腕の力が緩んだ。

その隙に、僕の腕を振り払い部屋を出ていく。

痛いですよ、Aさん。

腕じゃない。

心がズタズタにされたように痛い。

振り払われた手を静かに見つめた。