20邪魔者 ページ21
「久しぶりね、Aさん。」
「……お久しぶりです。」
ニコッと笑うお義母様。目元が孝支とそっくりだ。
笑い返そうとするもうまく笑えない。
なんて重々しい雰囲気なんだろう。
「今日はどういったご用でしょうか?」
耐えられなくなり無理に明るい声を出す。
一瞬目を伏せたお義父様が口を開いた。
「君に話があってね。
婚約を解消してほしいんだ。」
あぁ、嫌な予感当たっちゃったな。
「何を………おっしゃっているのですか?」
心臓が痛いくらいに大きく脈を打つ。
たらりと嫌な汗が背中を伝った。
「その様子だと知らないようだね。今、二宮グループの力が落ちてきている。事業に失敗したらしいじゃないか。」
お父さんに目を向けると気まずそうに視線をそらす。
なんで言ってくれなかったの。隠してどうにかなる問題じゃないのに。
「このままだと二宮グループは衰退の一途をたどるだろう。そうなると私達も困るんだ。だから婚約を……。」
「嫌です!」
喉がカラカラに乾く。目が熱い。
嫌だ、嫌だよ。
約束したんだ、みんなと。
結婚式呼ぶって。
約束したんだ、孝支と。
「もっと勉強して、必ず立て直してみせます。だから、婚約を解消しないでください。
一緒にいたいんです。」
そばにいるって。
はらはらと落ちていく雫をお義母様が優しく拭ってくれた。
「あなたが孝支を大切に思ってくれてるように、私達も大切に思っているの。
だからあの子の将来にできる限りの可能性を残しといてあげたい。
ここで、あの子の未来を潰すわけにはいかないの。」
私といたら孝支の未来が潰れてしまうの?
私は孝支の未来には………………邪魔?
「では私たちはこれで。
今日のことは孝支に話さないでくれ。落ち着いたら私たちから話す。」
その目は、『孝支に関わるな。』とでもいうように鋭くて。
バタンとドアがしまる音だけが大きく響いた。
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びじゅ - このお話に出会えて良かったです (2019年7月24日 18時) (レス) id: 29491d0de8 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 奏 - とても素敵な物語でした。ありがとうございました (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4558ce44e2 (このIDを非表示/違反報告)
いちごって美味しいよね - 最高でしたぁぁぁ!!! (2018年9月13日 0時) (レス) id: 9e74247a01 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ アルグ - 面白かったです!最高(・∀・)イイ!! (2017年1月1日 11時) (レス) id: a8d11639cf (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - すごい感動しました…!その才能、分けてほしいです!! (2016年10月19日 2時) (レス) id: f6717c82fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らるこ | 作成日時:2014年10月15日 23時