10 他愛もない話 ページ10
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よく言うじゃないか、漫画でも小説でも、
｢頭を鈍器で殴られたような｣って、そんな感じ。
鈍くて長く響くような痛みと共に彼の声が、言葉が、薄くなることも消えることもなく、絶えず私の頭の中をぐるぐる回る。
うるさいうるさい。
逃げようと目を閉じればそれが大きく聞こえるものだから逃げようもない。
こんなところまでしつこいのか、彼は。
｢あんたに言われたくないっつーの｣
言うだけ言って帰ったくせに。
面と向かって言う勇気はないから、彼から少し離れたところで言ってやった。
当の本人はクラスメイトと談笑していて呑気に笑っていたけれど、弾みで落としたその醜いものを拾い上げたのは幸か不幸か、もうひとりの当事者。
｢珍しくAが口悪い｣
くすくすと笑いながら、どうかした？、そう顔色をうかがう彼女の目が全部見透かしているみたいで怖いと感じてしまった。
善意を疑ってしまっている自分が一番怖いというのに。
｢なんでもないよ｣
｢嘘だぁ。顔、怖かったよ？｣
｢……バレたか。女の子の日だからイライラしてるんですぅー｣
｢あーそれはしょうがない｣
あともう一つ怖いこと
平気な顔して答えられるようになったこと。
嘘でもあしらいでも、なんでも。
適当に嘘をついて、適当に誤魔化して、適当に。
へらへらと笑った私につられて彼女も笑ったから
罪悪感を感じつつ、ホッとしてしまった。
ても、そうやって上手いこと逃げ続けても
神様ってのは意地悪で
避けたものを何度でも目の前に持ってくるのだ。
｢なんか侑、今日怖い｣
クラスメイトの他愛もない話が、笑い声を交えたその声が、急に鮮明に聞こえた。
｢そう？｣
｢機嫌悪いってわけじゃないんだけど、んー……あれだ、前の侑に近い感じ｣
｢あー、だいぶ変わったもんね。しかも急に｣
“変わった”、その言葉に過剰に反応したのは
私はそれを知らないから。
初めからああだったじゃないか、彼は。
｢ねぇ｣と彼女らに声をかけた、勢いをそのままに。
突然で驚いたように目を見開いていたけれどお構い無しに話を続けようと口を開いた。
突然こんなことを言えば変に思われるだろうか。
それ以上に知りたかった、“前の”彼のこと。
ちょうど彼の名を口にしたあたりだったろうか。
私の肩を掴んで、私の名前を呼んで、
話を遮った杏子が｢次、移動教室だよ。早く行こ｣そう言ったのだ、やけに穏やかな声で。
無理矢理に、その表現がぴったりなくらい。
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青雲 - 読んで美しいと思いました。らるこさんの作品本当に好きです！これからも無理しない程度に頑張ってください！ (2018年9月14日 16時) (
レス) id: 38830a0efa (このIDを非表示/違反報告)
つきら - らるこさんの作品すごいすき (2018年8月18日 2時) (レス) id: 2b230d4b3a (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - らるちゃん完結おめでとうございます！！だいすきならるちゃんの侑くんのお話が読めて本当に胸がいっぱいです（ ; ; ）このお話がだいすきです、素敵なお話をありがとう！ (2018年4月29日 23時) (レス) id: 59e93a82ae (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - これ読んで久しぶりに恋しちゃいました！久しぶりにときめいちゃいました！！！ほんとに素敵でした！ (2018年4月29日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
らるこ(プロフ) - ぷちしゅー。さん» ぷちしゅー。さん！お久しぶりです(*¨*)そして御返事遅くなってしまってすみません……！こちらこそまた読んでいただけてることとても嬉しく思います.*･ﾟ引き続き楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします(*¨*) (2017年10月11日 15時) (レス) id: 0508647bd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らるこ
| 作成日時：2017年8月19日 20時
