誰そ彼。

6 おでこ ページ6

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二人で桜を見たあの日以来、
心なしか宮くんとの距離が縮まった気がする。


｢お、おはよう！｣

｢おはようさん。なんや、えらい気合いの入った挨拶やな｣

｢そうかな？いつも通りだけど｣

｢髪型は確実に違うと思うねんけど｣


なにかしらの会話のネタになればいいなという下心と、単に朝の限られた時間の中で前髪が直らなかったからと理由で、前髪をくくって見せたおでこを彼が叩く、ぺちんと可愛い音がした。

叩かれたそこを抑えて彼を睨めば、｢子供か｣と珍しく声を出して笑うものだから複雑。


少し拗ねて見せると、今度はくしゃりと頭を撫でられる。
距離が縮まったとはいえ、なんだ今日はやけに構ってくれるじゃないか。


｢ねぇねぇ｣

｢んー？｣

｢宮くんもやってみる？｣

｢珍しくおもろいこと言うやん、全然笑えへんけど｣

｢はーい聞こえなーい。ほらできたよ｣

｢めっちゃ手際ええやん……｣


少し照れたように拗ねたように、じとりと私を睨む彼は髪型のせいか怖さは半減。
むしろ可愛いくらい。

珍しい彼の姿に面白がったクラスメイトが群がって、顔の広い彼はあっという間に囲まれて。
そんな輪の中心で悔しそうに顔を歪めながら冷やかしを返す宮くんをぼんやり眺めていれば、ふいに目が合った。

いつもは隠れている自身の額を指さして、笑う。




『お そ ろ い』




あえて声を出さず伝えられたその言葉に
妙に秘密めいたものを感じて

私も自身のそれを指さして笑ってみせた。




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