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4 遅刻のチャイム ページ4

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下駄箱から落とすように靴を下ろして足を突っ込む。
かかとを踏むのはなんとなく嫌で、人差し指を引っ掛けて滑り込ませた。

時計を見れば始業チャイムギリギリ。
セットした前髪を軽く直しながら床を蹴った。
こんなことなら始めから巻かなきゃよかった、そしたら遅刻なんて心配なかったのに。


誰もいない廊下を突っ切って階段に差し掛かって見つけた大きな背中。
欠伸をしたのか、身体が膨らむ。
そんな様子に少し笑いながら、あえて声をかけずに通り過ぎる。


否、はずだった。



「ぐえっ」

「この俺をシカトとはやりよるなぁ」

「オハヨウゴザイマス」

「ん、おはようさん」


満足気な彼に調子を崩されつつ、鳴り響くチャイムにハッとしてまた階段を駆け上がる。

「パンツ見えとるよ〜」と伸びた声に慌てて押さえて振り返れば、嘘やてとお得意の意地の悪い笑顔。


「そんな慌てんでいいのに、もうチャイム鳴ってもうたし」

「宮くんが引き止めるからじゃん!」

「はいはい、ごめんて。まぁええやん、自習なんやし」

「……自習?」

「風邪引いたんやて、みかチャン。せやから英語は自習」


友達から送られてきたであろうメッセージが映る画面を私に見せながら、へらりと笑う。
英語教師であるみかちゃんが少し心配ではあるけども、自習は有難い。


それならゆっくり教室に向かおうかと思った私の手を誰かが引いた。
ひんやりとしたそれは、昨日覚えたてのもの。

昨日も触れた骨ばった大きい手に、まるで心臓まで掴まれたかのようにドキリとした。



「折角やからさ、ふたりで遊ばん?」



根は真面目な私。
自習であれサボるという行為に少しの罪悪感を感じながらも、やけに魅力的な誘いにのってしまった私は階段を降りた。



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青雲 - 読んで美しいと思いました。らるこさんの作品本当に好きです!これからも無理しない程度に頑張ってください! (2018年9月14日 16時) (レス) id: 38830a0efa (このIDを非表示/違反報告)
つきら - らるこさんの作品すごいすき (2018年8月18日 2時) (レス) id: 2b230d4b3a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - らるちゃん完結おめでとうございます!!だいすきならるちゃんの侑くんのお話が読めて本当に胸がいっぱいです( ; ; )このお話がだいすきです、素敵なお話をありがとう! (2018年4月29日 23時) (レス) id: 59e93a82ae (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - これ読んで久しぶりに恋しちゃいました!久しぶりにときめいちゃいました!!!ほんとに素敵でした! (2018年4月29日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
らるこ(プロフ) - ぷちしゅー。さん» ぷちしゅー。さん!お久しぶりです(*¨*)そして御返事遅くなってしまってすみません……!こちらこそまた読んでいただけてることとても嬉しく思います.*・゚引き続き楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします(*¨*) (2017年10月11日 15時) (レス) id: 0508647bd8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らるこ | 作成日時:2017年8月19日 20時

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