29 あの日の空の色 ページ29
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｢これが、全部｣
映画を観終えたような気分だった。
心が鷲掴みにされるような鈍い痛みと、彼の話を元に創り出した情景が頭を駆け巡って目眩がした。
色んな感情や言葉が体の中で渦巻いているというのに、声なんて出せそうにもなかった。
少しの沈黙を置いて、全てを話してくれた宮くんは大きく深呼吸をするとガバッと顔を上げて｢あー！やっと言えた｣すっきりとした表情で空に向かって叫んだ。
いくら公園の隅のベンチだからといって、こんな大きな声を出せば子供たちは驚いてしまうのではないか、なんて心配は無用だったようだ。
周りを見渡せばいつの間にか公園には私たちだけで、入口、犬の散歩をしていた男性だけが少しこちらに目を向けただけだった。
｢ずっと、後ろめたかった｣
｢過去のことを黙っていることが？｣
｢それもそうやけど、あんなことしておきながら平然とお前に接してたこと｣
ベンチの背もたれに体を預けて空を仰いだまま、彼の声はどこか弱さがあった。
｢思い出してほしいなんて言うといて、自分からは話せへんかった。善人ぶって、へらへら笑ってお前に近づいて……｣
一瞬の間を置いて｢言うたやろ？｣、小さく言葉を落として体を起こす。
｢嫌われたくないって｣
向けられた瞳。そこに映った空の色が揺れる、見覚えのあるそれにぐらり、心も揺れた。
いつだっけ、この空の色。
雲ひとつない西の空が燃えるように赤みを帯びて、息を呑む美しくもどこか胸を締め付けるような情景。
ああそうだ。
あの日、あの時、この場所で。
｢だって好きやもん、お前が｣
柔く細めた瞳の奥で色が深まる。
走馬灯のように駆け巡る記憶に心の奥底に感情が流れ込んで、気づけばはらり、涙が頬を伝う。
ギョッとしたように目を丸くして、服の袖で涙を拭ってくれる彼は珍しく動揺していて、思わず笑ってしまった。
｢泣いたり笑ったり、忙しい奴やなぁ｣
｢だってやっと思い出せたんだもん｣
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青雲 - 読んで美しいと思いました。らるこさんの作品本当に好きです！これからも無理しない程度に頑張ってください！ (2018年9月14日 16時) (
レス) id: 38830a0efa (このIDを非表示/違反報告)
つきら - らるこさんの作品すごいすき (2018年8月18日 2時) (レス) id: 2b230d4b3a (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - らるちゃん完結おめでとうございます！！だいすきならるちゃんの侑くんのお話が読めて本当に胸がいっぱいです（ ; ; ）このお話がだいすきです、素敵なお話をありがとう！ (2018年4月29日 23時) (レス) id: 59e93a82ae (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - これ読んで久しぶりに恋しちゃいました！久しぶりにときめいちゃいました！！！ほんとに素敵でした！ (2018年4月29日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
らるこ(プロフ) - ぷちしゅー。さん» ぷちしゅー。さん！お久しぶりです(*¨*)そして御返事遅くなってしまってすみません……！こちらこそまた読んでいただけてることとても嬉しく思います.*･ﾟ引き続き楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします(*¨*) (2017年10月11日 15時) (レス) id: 0508647bd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らるこ
| 作成日時：2017年8月19日 20時
