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21 嵐のあとに ページ21

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無言の肯定ってやつなんだろう、きっと。
黙ったままの杏子にそう思った。

何か知ってる。
私だけが知らない。
それが嫌に気持ち悪くて、もどかしい。
なんでそんなに隠すんだって、早く教えてくれればいいじゃないかって、叫んでみたいけれど、少し怖い、だから彼女をただ見つめた。


随分と長く感じられた沈黙のあと、するり、私の腕を掴んでいた小さな手は解かれ、かわりに強く、力強く、宮くんの胸ぐらを掴む。
どこにあんな力を隠し持っていたのだろうと驚いたのは、きっと目を見開いた彼も同じ。


「……嘘言ったらタダじゃおかないから」

「最後のチャンス、棒に振るほど馬鹿やないで、俺も」

「もう十分馬鹿なのよアンタは!!」

「っ!、おい、締まってる!締まってるて!」

「し、め、て、ん、の、よ!」


目の前で繰り広げられる短い攻防戦。
もしかしたら彼らは仲がいいのかもしれない。
犬猿の仲ってやつ。
小柄な杏子にたじたじな宮くん、この光景は妙な面白さがある。

まるで弾くように彼から手を離し、一息ついた彼女は「A」、私の目の前に。
「私さ!」、彼女の声はよく通る。そうだな、例えば、頭の中に広がるモヤなんて一瞬で吹き飛ばすくらい。


「宮くんのことなんて好きじゃないから」

「……へ?」

「私が大切なのはAだから。あ、勿論友達としてよ?」


つらつらと彼へと悪口を並べながら私の前髪を直す指先がひどく優しくて、「うん、可愛い」そう満足気に笑う、瞳に少しばかりの切なさを滲ませて。


何かあったらすぐに電話しろと最後まで念を押しながら帰った彼女はまるで嵐だ。


「あー、なんだ、その、……盛大に振られた情けない男と一緒に帰ってくれますか?」


少しバツが悪そうに頬を掻きながら、瞳はあさっての方向に。
「はい」とだけ返事をして、昇降口を出た。


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青雲 - 読んで美しいと思いました。らるこさんの作品本当に好きです!これからも無理しない程度に頑張ってください! (2018年9月14日 16時) (レス) id: 38830a0efa (このIDを非表示/違反報告)
つきら - らるこさんの作品すごいすき (2018年8月18日 2時) (レス) id: 2b230d4b3a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - らるちゃん完結おめでとうございます!!だいすきならるちゃんの侑くんのお話が読めて本当に胸がいっぱいです( ; ; )このお話がだいすきです、素敵なお話をありがとう! (2018年4月29日 23時) (レス) id: 59e93a82ae (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - これ読んで久しぶりに恋しちゃいました!久しぶりにときめいちゃいました!!!ほんとに素敵でした! (2018年4月29日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
らるこ(プロフ) - ぷちしゅー。さん» ぷちしゅー。さん!お久しぶりです(*¨*)そして御返事遅くなってしまってすみません……!こちらこそまた読んでいただけてることとても嬉しく思います.*・゚引き続き楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします(*¨*) (2017年10月11日 15時) (レス) id: 0508647bd8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らるこ | 作成日時:2017年8月19日 20時

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