20 小さな手 ページ20
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あまりにも長く感じた1日も、気づけば放課後。
不安なのかなんなのか、嫌に動く心臓を抑えるように一息ついて周りを見渡す。
今日は先帰ってて。
そう伝えたら、どうしたのって言うだろうか、杏子は。嘘を言うのも気が引ける。だからといって本当のことを言うのも怖い。
｢怖いって、なんだ｣
やましい気持ちがある訳でもないのに、彼女はちゃんと話せばわかってくれるだろうに。
そうは思っているけれど怖いってことは何かしら彼女にたいして後ろめたい気持ちがあるってことで。
そんなことを考えながら足を進めて、顔をあげたら下駄箱で、結局言えずじまいだったなとため息をつく。
自分一人だけの足音がやけに響いた。
なんだなんだ、杏子どころか約束したはずの宮くんすらいないじゃないか。
そんな呆れ半分の気持ちは、聞いたこともないような怒鳴り声とともにかき消されて、探していた二人は下駄箱の端、夕日のオレンジから隠れるようにして一緒にいた。
一緒にいた、なんて可愛いものじゃなかったけれど。
「ふざけんな」
恐らく初めてだろうというくらい怒りをあらわにして詰め寄る杏子と、俯いたままの宮くん。
訳がわからず判断が遅れた、下駄箱の影から体を覗かせてしまったのだ。
しまいには、慌てて後ずさった右足が下駄箱に当たり、音を鳴らす。最悪だ、心の中で口にした。
途端、体を離す二人とこちらを向く四つの目。
どんな感情が渦巻いているのか分からないけれど、困惑の色だけは伺えた。
｢どうしたの？喧嘩？珍しいね杏子がそんなふうになるなんて｣
饒舌な割に、気の利いたことすら言えず彼らと合わせていたはずの視線は気づけば足元に。
それは突然に、揺れた。
｢帰ろ｣
｢え、あ、杏子？！｣
｢こんなやつと話す必要なんかない｣
私の腕を引く小さな手。あまりに力強くて、よろける。強いのに、震えていた。
そういえば、なんでだろう。
なんで彼女の怒りの矛先が“彼”なんだろう。
なんで私と宮くんがただ“一緒に帰る”んじゃなくて何かについて“話す”ためにここにいるって知ってるんだろう。
｢杏子も知ってるの？｣
まるで子供が親に問うように、純粋に素朴に投げかけたそれは彼女の足を止めるには十分すぎるものだったらしい。
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青雲 - 読んで美しいと思いました。らるこさんの作品本当に好きです！これからも無理しない程度に頑張ってください！ (2018年9月14日 16時) (
レス) id: 38830a0efa (このIDを非表示/違反報告)
つきら - らるこさんの作品すごいすき (2018年8月18日 2時) (レス) id: 2b230d4b3a (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - らるちゃん完結おめでとうございます！！だいすきならるちゃんの侑くんのお話が読めて本当に胸がいっぱいです（ ; ; ）このお話がだいすきです、素敵なお話をありがとう！ (2018年4月29日 23時) (レス) id: 59e93a82ae (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - これ読んで久しぶりに恋しちゃいました！久しぶりにときめいちゃいました！！！ほんとに素敵でした！ (2018年4月29日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
らるこ(プロフ) - ぷちしゅー。さん» ぷちしゅー。さん！お久しぶりです(*¨*)そして御返事遅くなってしまってすみません……！こちらこそまた読んでいただけてることとても嬉しく思います.*･ﾟ引き続き楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします(*¨*) (2017年10月11日 15時) (レス) id: 0508647bd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らるこ
| 作成日時：2017年8月19日 20時
