19 それが嘘だというのなら ページ19
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彼女と距離ができた時、嫌という程痛感したじゃないか。
ずっと一緒にいた、と。
悩んだとき一番に助けてと声をかけた、と。
知らないわけがない。
もし宮くんの言うことが本当であるのならば、彼女は知っているはずなんだ。
音楽室へ向かう廊下を二人並んで歩きながらまるで昨日見たテレビの話でもするかのように、「宮くんと私って付き合ってたの?」そう聞いた。
開いた窓から入る風は少し、冷たい。
足を止めかけた彼女は、
目を丸くした彼女は、
すぐにあははと声を出して笑ってまた歩を進めるものだから呆気にとられた私の足は止まったまま。
くるり、こちらを向いた杏子は呼吸を落ち着かせるように深く息を吐く。
「はー、おっかし。いきなりなんの冗談?」
「宮くんが、そう、言ってて……」
「冗談好きだもんね、宮くんは。信じるだけ無駄無駄」
「でも……」
「ガツンと言っとかなきゃ、Aのことからかうのはやめろって」
「でも嘘ついてるようには見えなくて___」
「やっば、あと2分!急ごっ!」
また、うまいことはぐらかされてしまった気がする。前を走る彼女の背中に言いかけた言葉を飲み込んだ。
二人で帰るということを言いそびれてしまったことが少しの罪悪感としてうようよと心臓の奥の方を這っていた。
授業中、大きく口を開けて出てきた欠伸を楽譜で隠す彼女を横目に、ごめんねと心の中で謝った。
一度、ちゃんと全部宮くんに聞いてみよう。
どうしても、どうしても彼のあの表情が嘘だと思えなくて、確かめたいと思ってしまったんだ。
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青雲 - 読んで美しいと思いました。らるこさんの作品本当に好きです!これからも無理しない程度に頑張ってください! (2018年9月14日 16時) (レス) id: 38830a0efa (このIDを非表示/違反報告)
つきら - らるこさんの作品すごいすき (2018年8月18日 2時) (レス) id: 2b230d4b3a (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - らるちゃん完結おめでとうございます!!だいすきならるちゃんの侑くんのお話が読めて本当に胸がいっぱいです( ; ; )このお話がだいすきです、素敵なお話をありがとう! (2018年4月29日 23時) (レス) id: 59e93a82ae (このIDを非表示/違反報告)
京ちゃん。(プロフ) - これ読んで久しぶりに恋しちゃいました!久しぶりにときめいちゃいました!!!ほんとに素敵でした! (2018年4月29日 20時) (レス) id: 706e95c0fd (このIDを非表示/違反報告)
らるこ(プロフ) - ぷちしゅー。さん» ぷちしゅー。さん!お久しぶりです(*¨*)そして御返事遅くなってしまってすみません……!こちらこそまた読んでいただけてることとても嬉しく思います.*・゚引き続き楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします(*¨*) (2017年10月11日 15時) (レス) id: 0508647bd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らるこ | 作成日時:2017年8月19日 20時