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ギャップ萌え、というやつなのだろうか。普段は飄々としているAの崩れた様子にジフンは驚いた。最悪の出会いから2週間は超えた。その内に幾度かはこうしてAと関わってはいるけれど初めて見るAの慌てた素振りだ。
キスが出来そうなくらい間近にあるAの顔は、紅葉みたいに真っ赤だ。加えて朱いぷるぷるの唇が震えるのが嫌に艶っぽくてジフンも呆気に取られた。汗で僅かに頬に張り付いた髪が更に想像を助長させる。まるで情事のときに見せる顔だ。
_____こいつ、ヤルときこんな顔すんのかな。
「ソヌA、今すっげええろいよ?」
「んっ、だっから、耳はイヤだって、…!」
力が抜けた様にAはくたりと背もたれに凭れ掛かった。余計にジフンとの顔の距離が縮まって大袈裟に肩をビクつかせる。
ジフンは顔が見たくなって、前髪を指でそっと掬ってやった。Aは照れたのか「やっ」と声を絞り出す。
_____だれだよ、こいつが美人じゃないとか言ったの。
棚上げ野郎である。面食いのジフンは悪食ではあるが一定以上の容姿でないと食指は動かない。Aはその彼のお眼鏡に敵うほどの顔を持っていた。
今迄は、雰囲気美人だとか、スタイルだけだとか、Aの顔には様々な憶測が飛び交って、嫉妬や悪意の対象になっていた。けど、これは。
「前髪あげない方がいいわ、前髪はやってやんね」
「は、…?え?…あ、あ?うん?」
状況が飲み込めないAは疑問符を沢山飛ばしながらのそりとジフンに背を向けた。
「なんでお前、髪の毛あげてなかったの」
「いつもはベベがやってくれてたんですー、高校入ってから何故かやってくれなくなった…」
「嫌われたんだろ」
「心抉るのやめてくれる?」
ジフンは器用に手櫛で髪を整えて、眉の位置ほどに調節する。するりと手を抜けてしまう程にAの髪の毛は手入れされていた。長い髪相手だから少々手飾ったが、流石モテる男の子。完璧である。
「ズボラっぽいのに何で髪と肌は綺麗なの」
「ん、ありがと。私だって恋する乙女よ」
「なら顔見せればいいだろ」
「ベベさえ綺麗って言ってくれれば充分」
Aは頬が未だに火照っている。先程の耳への攻撃がまだ尾を引いていた。
ジフンは悪戯がしたくなって、Aの頸に顔を近付ける。軽くキスを落とした。
「ん、なんかした?」
「別に」
ジフンの唇に塗られていた赤が薄くなっていることにAは気付いたが特に考えずにスルーした。
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こー - いえいえ!わざわざありがとうございます(涙)楽しみにしてました!読ませていただきますね! (2020年5月25日 0時) (レス) id: 15c5b103b3 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - こーさん» 遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。今日やっとお話あげたので、まだ気があれば是非読んで下さい。感想待ってます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
こー - お久しぶりです( ^_^ )投稿したお話って何日くらいしたら見れるんですかね?? (2020年5月20日 23時) (レス) id: 15c5b103b3 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - こーさん» コメントとても嬉しいから大丈夫ですよ〜笑笑 ありがとうございます、地道に頑張ります。1日ほどお待ち下さい〜! (2020年5月12日 1時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - springさん» 会社の同期で話進めてるので、幼なじみ設定である人を出そうと思います〜。リクエスト送って下さったのにすみません、幼なじみのお話はまた別の機会か、並行で書かせて頂こうと思います。次作も何卒よろしくお願いします〜! (2020年5月12日 1時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:FIX | 作成日時:2020年4月8日 11時